『運命よ、その血杯を仰げ 遠征王と隻腕の銀騎士』
 (うんめいよ、そのけっぱいをあおげ えんせいおうとせきわんのぎんきし)


著 者:高殿 円
挿 絵:麻々原 絵里依

発 行:2003年4月
発行所:角川書店 ビーンズ文庫

内容:
 ホークランドの将軍ミルザに囚われたパルメニア国王アイオリア。元夫ミルザに求められるまままどろむような日々を過ごしていたが、それも長くは続かなかった。再び逃亡の身に落ちるも、数十年前とはまったく違ったものであることをアイオリアは感じていた。
 パルメニアでは銀騎士ナリスがアイオリア救出に動き出す。
 そして、大公ゲルトルードは望みを叶えるべく--

感想:
 最終巻です。
 前回から崩れだしてあっというまにここまで来てしまいました。加速は、一冊のうち中盤ほどまで続きます。そして最後は……。
 なるほどね、と納得できる終わり方をする人もあれば、あぁ惜しいな、と寂しく感じる人もいます。お、まだまだ、と思う人もね。

 それにしても。
 え、あ、あれ? ミルザさん?
 どうしたことだろう。密かにお気に入りに入れていたミルザさんが、ミルザさんが、ミルっ……ってなことになりました。
 チューリップマニアは金魚の糞に敵わなかったということですね。

 誰かのために何かをする、って難しいですね。そのために自分は大きな重荷や苦痛を受ける場合もあるわけですから。それが叶ったときの喜びは痛みの分だけ大きいけれど、そこまで行くことができる人はどれだけいることでしょうか。
 痛みに強く。
 自分に負けることが嫌いで。
 心の芯がとても固い人なんでしょうね。

 叶わない望みの代替は結局ニセモノです。でもニセモノでも心慰められることもあるわけです。その人はもういないけれど、その人の写った写真を大切にしまっておくような、その人にまつわるものを大切なものを取って置くような行為に似ている。
 それもまあ、幸せかな。
 願いが叶わなかったことをいつまでも後悔するよりも、叶わないとわかっているのに願わずにはいられないよりも、自分の心と体をちょっと落ち着けてみるのも良いのですね。

 ときどき、一息入れて、虹を探してみるのも良いかもしれません。


2005.02.11

『そのとき翼は舞い降りた』
『そのとき鋼は砕かれた』
『そのとき君という光が』
『ジャック・ザ・ルビー 遠征王と双刀の騎士』
『エルゼリオ 遠征王と薔薇の騎士』
『ドラゴンの角 遠征王と片翼の女王』
『尾のない蠍 遠征王と流浪の公子』