『鬼籍通覧 2 無明の闇』(きせきつうらん 2 むみょうのやみ)
著 者:椹野 道流
発 行:2000年3月
発行所:講談社 講談社ノベルス
内容:
その日、O医科大学法医学教室には赤ん坊の解剖依頼が来た。若い夫婦は突然のことに驚き、泣きながらも納得して帰っていった。しかし午後にもまた赤ん坊の司法解剖が舞い込むが、こちらはそうもいかない。国家試験の合否を待ちながらも解剖に望んでいた伊月は同情し、都築教授に主張をぶつけてしまう。
感想:
赤ん坊を抱っこしたことがありますか?
ふにゃふにゃしていて、温かくて、頭が重くて、おしめでお尻がどでんと膨らんでいて、ミルク臭いんです。どこもかしこも小さくて、ちょっとしたことで壊れそうなくらい柔らかいんです。
でも、一人の人間なんですね。
とうとう国家試験の合格発表が迫ってきました。というか当日です。豚カツ食べてる場合じゃないよ伊月君。
伊月はイライラして落ち着きません。わが子を亡くして泣く親や、責任追及する身内を間近に感じすぎたんですね。それを止めるミチルさんもなんだかイライラしていて、なんと爆発。都築教授がやんわりと取り成してくれなかったら……。
なかなかミチルさんも熱いです。
「あー」とか「うー」とか言えない赤ん坊と意思疎通をするのは難しいですよね。しかも亡くなっていればなお更です。
十歳にもならない子どもとは会話は成り立つでしょう。でも全ての意思が通じるなんてことはありません。大した抵抗もできない子どもをぶつのは簡単でしょう。ぶたれた痛みを忘れるのは難しいけれど。
でも即死だったら、大人だって何も言わなくなるんですね。当然だけど。
何も言わなくなったから、何をしても良いんでしょうか?
拭い清めて、服を着せ、花を敷いた棺桶に納めたとき、せめてこうしてあげるのが精一杯だと思いました。地面に投げ捨てられるよりも良いと思いました。
それは血の繋がりがあるからでしょうか? 家族だからでしょうか? 地面に見知らぬ人の亡骸があったとき、わたしはどうするんでしょうね。
身近な人の死というものはなかなか強烈です。ひんやりと冷たくなった体の感触は忘れられそうにもありません。
これからも伊月たちはそのひんやりとした感触に触れ続けるんですね。
今回は筧君の犬っぽいところが花丸でした。 ∪・ω・∪ カワイイ
2005.01.26-27
:『鬼籍通覧 1 暁天の星』
:『鬼籍通覧 5 禅定の弓』