「おにはーそとー」

 ベシ、ベシ

「おにはーそとー」

 ベシ、ベシベシシ



「……ニコ、おまえ、オレになんか言いたいことあるのか?」

「うぅん」

 袋から豆を鷲掴み、ニコはまた投げつける。



 ベシベシ、ベシ



「何してるんだ?」

「豆まき。セツブンだから」

「ニコ。節分は昨日だ。もう終わったんだ。そしてなんでまたオレに投げる?」



 ペシッ



 広いおでこにジャストミート。



「トーコがね、風邪で寝込んでるんだ」

 鬼の霍乱だな、と思っても口にしない。

「でね、テルに豆まいといてって、お願いされたんだ。ぼく昨日はバイトだったから、今日になるよって言ったけど、トーコいいって言ったよ」

 豆を投げつけられる人間の許可は要らないのかよオイ、と突っ込みたい。

「おにはーそとー」



 ベシ、ベシベシシ



「テルはね、ボンノーだらけだから、まいといてって言われたんだよ」

「…………」

「おにはーそとー」



 ベシベシ、ベシ、ベシシッ



「そうか」

 いろいろ言いたいことはあったが、気の済むまで煙草に火はつけずにおいた。



 テル、三一歳。

 煩悩だらけだという理由で春一番に豆を投げつけられる男。