階段の半ばまで下りたとき。

 見慣れた道の先で、うろつくものがあった。



 曲がり角に隠れ、現れては階段の一段目に足をかける。しかしやめてしまう。そして曲がり角に隠れ、現れてはまた階段の一段目に足をかけ、やはり躊躇って角の向こうに消えてしまう。

 年頃の少女とはいえ、おかしな行動をする。



「ニーナ?」

 少女に声をかけると、二つの三つ編みを振り回し、驚いたような顔で振り返った。どうやら近くに来ても気づかなかったようだ。

「せ、せんせい……」

「こんにちは、ニーナ」

「……こんにちは」

 少女はそばかすのあたりを紅くした。



 少女のうつむいた先を見ると、柔らかい土には彼女の足跡がたくさんついている。いったい、どれくらいあの行動を繰り返したのだろう。

「どうかしたのかい?」

「うん。……魔法使いは、どう?」

 どうということはない。昨夜も遅くまで、文句を言いながらお役目を果たしていた。

「落ち込んでた?」

「いいや。どうして?」

「昨日、ほら……き、キライって、あたい、言っちゃったから……。傷つけちゃったな、って、思ってね……」



 謝りたいけど、言いにくい。



 年頃の子どもの心情は扱いが難しい。

 たとえ十一歳だろうと彼女は女で、けれど自分から見ればまだまだ幼い。大人に対するようでは冷たいだろうし、子ども扱いすれば嫌がるだろう。



「気にしているの?」

「う、うん」

 ちょっとだけね、と付け足す。

「謝りたい?」

「……魔法使い、気にしてる?」

「どうかな。わたしはルーじゃないから、わからないな。訊ねるのが、一番早いと思うけどね」

「怒ってた?」

「いいや。彼が怒るようなことが、昨日、あったかな?」

「あたいがキライって、言ったよ」

「でも、謝りたいんだろう?」

「うん」



 少女は落ち着きなく足を動かし、手を組みなおした。

 見ているだけでかわいそうになる。あんな男のためにこんなに悩むこともないのに--と言ってはかえって傷つけるだろう。





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