最近、悩んでいる。
 梅干子さんに毎朝起こされるときにシソで叩かれることは前々からの悩みの種だったが、このところ、もう一つ増えた。

 なんてことはない。些細なことだ。
 いや、でもね、些細なことだから気になるんだ。

 その新しい悩みの種は冷蔵庫で発生した。

 なぜ冷蔵庫なのか?

 悩んだ末、わたしは我が家の長老・漬物石老に尋ねた。
「ほ? なんじゃ、あれか」
 知ってるんですか?
「知っとるもなんも、ありゃ、ホレ」
 漬物石老はゴリ、と音を鳴らして顎をしゃくって見せた……らしい。石なのでどこが顎なのかわからないけど。

 振り向いた先では、問題の冷蔵庫がドデンと座っている。
 ん?
 ゆっくりと扉が開いた。

 音がする。なんだろう?
 わたしは足音をしのばせ、ゆっくり近づいていった。

 そしてわたしが見たものは……。

 梅干子さん、何をしてるんですか?
「あら、わからないの? 相変わらずドンねぇ」
 ほっといてください。それより、何をしているんです?
 どうして踊っているんです?

 わたしが見たものは、一列横隊の椎茸たちだった。

 ふわん
 ぽやん
 ふわわわん

 あぁ、菌が……菌が舞ってますよ梅干子さん、止めてください。
「馬鹿ね。ダンスのレッスン中よ。あっち行ってなさい」
 菌を蒔くダンスですか?

 ふわん
 ぽやん
 ふわわわん

 やめてください。

 わたしの願い空しく、椎茸たちのダンスは終始その菌を撒き散らすことになり、翌日また悩みの種が成長していた。

 そう。
 それだよ。

 採っても採っても椎茸が冷蔵庫の中にできちゃうんだよ。
 あんたの仕業ですか、梅干子さん!

 なんてわたしの怒りも空々しく、今日もおかずは椎茸だらけだった。
 商売できるな、なんて自分を慰める今日この頃。