何かにくだを巻きたい気分だ。
 何でもいい。電信柱でもコタツの脚でも、ペットボトルだって構わない。ペットボトルは1.5リットル以上が望ましいけど。

 仕事仕事。
 残業、残業。
 成績、功績、達成感。
 家に帰ればすべて薄れ、疲れの素。

 何でもいい。とにかくこの疲れを紛らわす方法を考えよう。
 顔を洗う。
 それがいい。冷たい水で洗えば、きっとさっぱりする。

 鏡を見る。疲れが顔が映る。
 歳を取ったな、なんて思いながら自分を笑ってやる。

 ん? なんだ、今のは。
 鏡に顔を近づけて口の中をよく見る。何もない。
 気のせいか。きっと疲れてるんだ。
 そうだ。顔を洗おう。

 バシャバシャ
 バシャビシャ

 あとの掃除が大変だ。
 まぁ、いい。
 どうだろう。少しは若返ったかな。
 ……なんだ。いつもこんな顔じゃないか。
 へへ、と笑ってみる。

 あ。
 鏡を覗き込む。

 いー。
 白い歯に。
 治療の後の見える歯に。
 海苔が!

 いつからだろう。朝? いや、海苔なんて食べてない。昼だ! 味付け海苔食べた! あの時だ!


 ……。

 へへ。

 笑ってみる。

 なんだ。いつもと一緒じゃないか。
 起きて食べて、仕事いって食べて仕事して、帰ってきたら疲れ果てて、ちょっと海苔が付いてたくらいだ。

 一日中難しい顔をしていたから、一日中気を張り詰めてたから、ここで「まぁ、一息つけよ」って海苔が言ったんだよ。

 まったく。

 海苔め。