『鬼籍通覧 5 禅定の弓』(きせきつうらん 5 ぜんじょうのゆみ)
著 者:椹野 道流
発 行:2004年7月
発行所:講談社 講談社ノベルス
内容(裏表紙より):
火災現場からO医科大学法医学教室に運び込まれた老人の遺体。単なる焼死と思われていたが、伊月とミチルが解剖したところ、火災の前に死んでいた。同じ時期、同地域で連続動物殺害事件が発生。新米刑事・筧と真相に迫るが…。
感想:
伊月の余計な一言で舞い込んだのは、焼け跡から見つかった老人の焼死体の司法解剖。先輩のミチルとともに解剖を始めると、不思議なことに遺体は灰を吸い込んでいなかった。それはつまり、火の手が上がって灰が舞い上がる頃にはすでに死亡していたということだった。
痴呆で放浪癖のあった以外健康体だった老人は、なぜ死んだのか?
新たな謎に頭を悩ませる刑事の一人・筧は、また別の事件も追っていた。近頃、小動物が無残に切り刻まれる事件が相次いでいたのだ。
火事の前に見かけられたという黒い車、老人の遺体と動物殺害現場にあった同じ小物--二つの事件に繋がりはあるのだろうか?
これで第5巻目となる『鬼籍通覧』シリーズですが、いつも後味の悪い最後を見せてくれます。
必ずしも正義が全てではなく、悪が法の下で裁かれようと、それで全てが片付くわけではありません。被害者の心にも、周囲の意識にも何か一粒の染みを残すのです。
そうまるで、たとえどんなに願おうと、産まれてくる子は選べず、産んでくれる親も選べないように。どんなに物欲しそうな目をしてもテレビからお菓子が飛び出してこないように!(かなり違うか……)
椹野さん自身も医学系に身を置かれているせいか、専門的なことは非常に詳しく解りやすく、かつニヤリとさせてくれるところもあります。ただのミステリとして読む以外にも収穫はあります。
そして、章の合間の一コマが、実は一番の楽しみだったりして。
伊月、ミチル、筧の三人が主に主役級でしょうか。
素直でちょっと無鉄砲な伊月。姉御肌のミチルさん。主夫にしたくなる(本音)筧くん。上司の都築教授もなかなか曲者で面白い。
椹野さんの著書は他のシリーズから嵌ったのですが、実は一人、両シリーズに登場する人物がいます。どちらでもなかなか良い役で、著者と同じくイベント召喚者のように思えます。だってどっちでも事件が発生するんだよ。
さて、「禅定の弓」の意味を知らない方は、どうぞ読んでから納得してください。
第五巻目ですが、シリーズ物ですので、好きなところからお読み下さい。
2004.11.05-07
:『鬼籍通覧 1 暁天の星』
:『鬼籍通覧 5 禅定の弓』