真っ白い封筒に 青空の便箋
黒いペンで
「拝啓」から始まり
「また 書きます。敬具」で終わる
拝啓 ヒーロー様
お久しぶりです。
いや。初めまして ですよね、きっと。
私は貴方のことが大好きでした。それは普通のファンというよりも、同じ世界に立てたらと希望を持っていました。
幼き頃から抱いていた夢は、もしも叶ったら、貴方の世界へと通じるものです。ジャンルは違えども、同じ世界で輝くことのできる夢。私が持っているのは、そういう夢なんです。
だから私も、叶えてから貴方に会おうと決めていました。対等の立場で、貴方と握手がしたいと願うようになっていました。
しかしどうしても我慢できなくなり、二月にサインをして頂きました。予想を遥かに上回る、信じられない程の緊張に、自分自身で驚いてしまいましたが。なんとも幸せな時間でありました。私の一生の宝物です。ありがとうございました。
その時はグッと堪えて、握手はしてもらいませんでしたよ。だから、私の夢はまだ終わってないんです。今も続いているんです。
でもこのヒーロー熱も、私の今の世界に好きな人が現れたら、自然と冷めていくのだろうなと思っていました。私のことを好きな人が、今の私の世界に現れたとき、ヒーローの魔法も解けてしまうと寂しく思っていました。
結論から言うと、私のその予想は、当たりませんでした。彼氏ができても、私の中のヒーローが消えてなくなることは皆無でした。
一ファンとして、これからも応援していこうと考えていたのに。ファンとして、いつか握手してもらえたらいいなと思っていたのに。
ヒーロー、貴方はいつからこんなにも深く、私の心に定着していたのですか。ファンに成り切れない私は、いつ貴方と握手できるのでしょうか。夢が叶ったら?ファンになれたら?それは、一体いつになるのでしょう。
そんな中でも、永遠と変わらないこともあります。それは、私はヒーローが好きということです。ヒーローを応援していくということは、これからも継続していきます。
貴方はこれからもずっと、私のヒーローです。
また 書きます。 敬具
疲れたー
あーーーーー‼
うわぁっ!えっ!なにっ!?
あ、すいません。。ヒ、ヒーローですよね?
お、おぅ。せやで。
私、ヒーローの物語を本にしたいのですが。許可をもらえませんか??
ん?なに?それ。どゆこと?
あの、二つ印刷してきたんですけど。例えばこれとか。
うおーーー!懐かしいなぁ!
私、ヒーロー先生の大ファンなんです。
めちゃめちゃ懐かしいやんかー。てか、読んでくれてたん?
はい、何度も読みました。
へぇ。
今も読んでます。
すごいなぁ自分。
ベストセラーとか興味ないですか?
えっ!これで?
素晴らしい作品だと思っています。
…本当に?
私、ヒーローの言葉が好きなんです。ヒーローの表現が、とってもカッコイイから。尊敬してますっ!
そぉなの?
はい。一番好きなのは…『手を繋いだトンボに仲間外れはいなくなった』ってとこです。
ここいーよね!俺も気に入ってんねん。
やっぱり!めちゃくちゃカッコイイですよね、ここ!
そーだ、そんなことよりさぁ、俺めっちゃ腹減ってんけど。
あ、すみません。長々と。。(そんなこと…か。苦笑)
ご飯食べに行かへん?
…。
…。
えっ!?
いや、良かったらよ。もし時間あって、良かったらなんやけど。この後みんなで行くから、良かったら一緒にどうかなーって。何か予定あった?
帰るだけですけど…
まだ食べてへん?ご飯
はい、まだでした。
ほんなら決まりなっ。
本当に私もいいんですか??
だって俺の作家でビューと、ベストセラーかかってるしな。
あ、
俺さぁ、ホント言うと、小さい頃から夢やってん。ベストセラー。
え、
いやいやいや、俺なんかが無理ってことは分かってるよ。才能ないって早々に諦めたし…本当に分かってんで!
違うんですっ!
ん?
違うんです。私と一緒だったから。
一緒?
はい。ヒーローの夢が私と同じで、一緒で嬉しかったんです。
そうなんや?
あ、でもっ!わたしも才能ないこと早々に気付いたんでw
そこも一緒やなw
はいwあ、いや、ヒーローは才能ありますよ!いけますっ!ベストセラー‼
じゃあ、打合せ、行こか?
はいっ!
どこの子なん?
群馬から来ました。
群馬!?
「FUN LETTER」vol.28編 完。