真っ白い封筒に 青空の便箋
黒いペンで
「拝啓」から始まり
「また 書きます。敬具」で終わる
拝啓 ヒーロー様
こんにちは。
先日はお忙しい中サインを書いて頂き、ありがとうございました。綺麗に飾って、毎日眺めています。これからも 大切にします。
あの日まで。あのときまで。貴方はまるで、私がみる夢の中の登場人物のように。近くにいそうでいて、実際には遥かに遠い存在でした。見ているときは、本当にすぐ側にいるみたいで。手を伸ばせば、そのまま触れてしまいそうなくらい近いのに。
ただ夢の時間が終わるとたんに、パッと貴方も消えてしまう。さっきまでそこに居たのが嘘みたいに、貴方は鮮明に姿を隠してしまう。真っ赤な緞帳が左右から対称に流れてきて、貴方の佳麗なお辞儀は覆われてしまう。
でも、それも、あの日まで。あの日の、あのときまで。本当にほんの少しだけ、二言三言言葉を交わしただけだけど。考えていた言葉の、ほんの僅かしか使えなかったけど。時間にしても、雀の涙程度だったんだけど。
あの刹那は、私には今永遠に感じられる。ヒーローと言葉を交わせるなんて。生きてて良かった、本気でそう思った。ヒーローの言葉を、こんなに近くで味わえるなんて。私は、貴方の言葉が一番好きです。
ヒーロー、握手はまだしてもらいませんでした。あの日は、敢えてしてもらいませんでした。あのときお願いしたら、貴方はきっと快く握手してくれていたことでしょう。
でもそれだと、ヒーローと一般市民の関係を崩せそうにないから。私はいつか貴方と同じ世界に立ち、堂々と握手してもらえる日を待ち望んでいるのです。夢が叶ったら、もう一度会えますか?会って、握手してもらえますか?
また 書きます。 敬具
Hiroさん、この度は受賞おめでとうございます。
ありがとうございます。
誰か目標にされている方はいらっしゃいましたか?
…あの、勝手に名前を出したらご迷惑かもしれないので……でも、ずっと尊敬してきた方がいます。
同じ業界の方ですか?
業種は違うけど、世界はやっと同じになれた気がしています。
その方は、貴方にとってどんな存在なんですか?
ヒーローです。私にとって、彼はヒーローそのものです。
ヒーローへ何かメッセージはありますか?
いえ。でも…見てくれたら、嬉しいなと思います。
まだお会いしたことはないのですか?
一度だけ。以前、サインを書いて頂いたことがあります。
今回のご褒美に、何か他にしてもらいたいことはありますか?
……握手
握手?
はい。
サイン書いてもらったとき、されなかったんですか?
このときのために、とっておいたんです。
なんと。年季入ってますねw
へへw本当に尊敬してるんです。
握手、してもらえるといいですね。
はいっ!また 叶えます。
「FUN LETTER」vol.25編 完。