「さいごのクリスマス」⑤ | My-Hero

My-Hero

ヒーローに憧れた夢。

ミユの成長が何よりも楽しみだった。初めて泣いてくれたとき、ちゃんと呼吸してるんだって感動した。初めて手に触れたとき、きゅっと私の指を掴んでくれてすっごく安心した。初めて抱っこしたとき、ミユがとっても温かくて今度はママが泣いちゃったよね。

やっぱりママ、泣いてばっかりだね。もっと笑顔の似合うママになれるように頑張るから、ミユにも見ていてほしいなぁ。もっと、一緒に笑いたい。

日に日に元気が薄くなっていく我が子の姿に、心がポキッと折れそうになる。こんな時だからこそ、私がもっと強くならなくちゃって思ってはいるんだけど、なかなか行動に表れてくれなくて。

ママは気付いてあげられなかったのに、ミユはすぐ見抜いちゃうよね。私が少しでも悲しい顔をすると、どうしたの?ってミユのがもっともっと何倍も悲しい顔してきいてくるから、ママびっくりしちゃうよ。

またそんな顔してたのかって反省して。こんな状況でもしっかりと周りを気遣える、ミユを尊敬する気持ちでいっぱいになるんだ。ママよりよっぽど強いよね。見習わなきゃね。

明日はいよいよクリスマス。ミユはちゃんとその日を迎えようとしている。本当に頑張ったね。天気予報に雪マークはついに見られなかったけど、ミユはまだサンタさんを信じてる。ママも信じてるよ。雪、降るといいな。


ママ?

んー?ミユちゃん、どうしたの?

ゆき、ふる?

降るかなぁ?雪が積もったら、あの木も真っ白になっちゃうよー。

サンタさん…。

サンタさん、今頃プレゼントとかソリの準備してるんじゃないかなぁ。楽しみだね。

うん。


声を出すのも辛そうで、喋れば喋る程掠れていって。でも、息は大きくなって。小さな肩で精一杯呼吸して。それも負担になるからと、今日はまた呼吸器を付けることに。

最近付け出した呼吸器を、ミユは珍しく嫌がり、先生と看護師さんを困らせた。ママとお話しができなくなるから、呼吸器は嫌いなんだって。

遊ぶの我慢して大人しくベッドで寝てるのに、お話しすることまで許されないなんて。ごめんね、ミユ。ママ、何にもしてあげられなくて。

ミユの容体が急変したのは、クリスマスに日付が変わった深夜の出来事。完全に意識がなくなってしまったのは初めてのことで、私はパニックになってしまった。

こんなことなら呼吸器を外して、ミユとずっとお話ししてあげれば良かった。ミユが抵抗したのは初めてだったのに。何できいてあげれなかったんだろう。少しでも楽に息するミユの姿に、私はまた逃げたんだ。

私は何度後悔すれば、間違えなくなれるの?もう嫌だよ、自分が嫌。私が一番ミユを傷付けてるのかもしれない。





また つづく。