「恋心を注いで」⑪ | My-Hero

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ヒーローに憧れた夢。

お疲れ様です、大須先生。

中石先生っ、この度はご迷惑をかけて申し訳ありません。

いえいえ、僕はなにも。

しかし、B組でも聞き取り調査をされると聞きましたが…

丁度先程済ませてきました。

そうだったんですね、お忙しい時期に申し訳ありません。

いえいえ、本当に僕は全然。でも、B組にストライキを起こす生徒がいましてね。

ストライキ…ですか?

大須先生の耳にも入れておいた方がいいかと思いまして、厚かましくもちょっとお知らせにきました。

わざわざすみませんっ。ありがとうございます。

今回は、無記名との指示が出ていたのですが。彼女だけは、しっかりと自身の名前を明記してきたんです。

…それほど主張したかったということでしょうか。

ええ、強い意志を感じました。

…今回の一件で、正直分からなくなりました。何をしたくて教師になったのか。教師として、これから何をすべきなのか。いや、以前から思っていたのかもしれません。ただ、これがきっかけだったってだけで

彼女の用紙は、名前以外は白紙だったんですよ。

!?

何も書かれていなかったんです。名前以外は、何も。だから、潔いストライキです。

それはまた…

僕も驚きました。こんなに自己主張する子だとは思っていなかったので。どちらかというと周りに合わせる協調性の強いタイプでしたから。面食らっちゃいました。

はぁ。

それだけでも大分驚かされたのですが。

まだ何か?

職員室に乗り込んで来ましてね。

えぇっ!?

大須先生には見せるなと、訴えられてしまいました。



本人に見せるのは、あんまりだと。

……中石先生に言っても…本当に申し訳ありません。

いえいえ。僕にもどうすることも出来なくて、こちらこそ申し訳ない気持ちです。

そんな…

あんなに行動力がある子だとも、正直思っていませんでした。



生徒を見る目だけは、だんだんと培われていると勝手に思い込んでいましたが。どうやら教師として学ぶことは、まだまだたくさんあるみたいです。

はい…。あ、あのっ、その生徒は今は?

どうやらもう帰宅したみたいです。職員室でも教室でも泣けなかったみたいで。

そうなんですね……七江は大丈夫でしょうか?

あ、分かりますか?七江だって。

あ、いや、その、なんとなく。。違う生徒でしたか?

いや、当たってます。でも彼女は大丈夫です。思っていたよりも遥かに強い子でした、七江は。

そうですか…。

それだけ大須先生にお伝えしようと思って、お忙しいところ失礼しました。

あ、いえ。ありがとうございました!





また つづく。