お疲れ様です、大須先生。
中石先生っ、この度はご迷惑をかけて申し訳ありません。
いえいえ、僕はなにも。
しかし、B組でも聞き取り調査をされると聞きましたが…
丁度先程済ませてきました。
そうだったんですね、お忙しい時期に申し訳ありません。
いえいえ、本当に僕は全然。でも、B組にストライキを起こす生徒がいましてね。
ストライキ…ですか?
大須先生の耳にも入れておいた方がいいかと思いまして、厚かましくもちょっとお知らせにきました。
わざわざすみませんっ。ありがとうございます。
今回は、無記名との指示が出ていたのですが。彼女だけは、しっかりと自身の名前を明記してきたんです。
…それほど主張したかったということでしょうか。
ええ、強い意志を感じました。
…今回の一件で、正直分からなくなりました。何をしたくて教師になったのか。教師として、これから何をすべきなのか。いや、以前から思っていたのかもしれません。ただ、これがきっかけだったってだけで
彼女の用紙は、名前以外は白紙だったんですよ。
!?
何も書かれていなかったんです。名前以外は、何も。だから、潔いストライキです。
それはまた…
僕も驚きました。こんなに自己主張する子だとは思っていなかったので。どちらかというと周りに合わせる協調性の強いタイプでしたから。面食らっちゃいました。
はぁ。
それだけでも大分驚かされたのですが。
まだ何か?
職員室に乗り込んで来ましてね。
えぇっ!?
大須先生には見せるなと、訴えられてしまいました。
…
本人に見せるのは、あんまりだと。
……中石先生に言っても…本当に申し訳ありません。
いえいえ。僕にもどうすることも出来なくて、こちらこそ申し訳ない気持ちです。
そんな…
あんなに行動力がある子だとも、正直思っていませんでした。
…
生徒を見る目だけは、だんだんと培われていると勝手に思い込んでいましたが。どうやら教師として学ぶことは、まだまだたくさんあるみたいです。
はい…。あ、あのっ、その生徒は今は?
どうやらもう帰宅したみたいです。職員室でも教室でも泣けなかったみたいで。
そうなんですね……七江は大丈夫でしょうか?
あ、分かりますか?七江だって。
あ、いや、その、なんとなく。。違う生徒でしたか?
いや、当たってます。でも彼女は大丈夫です。思っていたよりも遥かに強い子でした、七江は。
そうですか…。
それだけ大須先生にお伝えしようと思って、お忙しいところ失礼しました。
あ、いえ。ありがとうございました!
また つづく。