奇妙なアンケート。
答える=担任の先生を罵ることになるという内容。初めは答えることに躊躇していたが。人の命がかかっていることと、当の先生からお願いされたこともあり、戸惑いながらも皆答えを埋めていったという。
アンケートは原則全て埋めること。誰かと相談してはいけない。先生は内容を見てはいけない。誰かが教えるのも不可。等の細かい注意事項も伝えられ。最後に、出来た者から帰って良いとの指事が出たという。この条件により、ほとんどの生徒が解放されることとなった。少年Aと、他一名の生徒(以下少年B)を除いては。
少年Aは成績優秀で、期末試験等では常に上位をキープしていた。部活動にも積極的に参加し、クラスの学級委員まで務める、先生方にも評判の生徒であった。近所の住民からの評価も類似していて、「挨拶のできる真面目な子」として通っていたのだという。住民は皆、あんな大人しそうな子がどうして…と、動揺を隠せないでいる様子だ。
クラスメイトからも、勿論頼りにされていた。クラス内で何かしら問題が起きたときは、まず委員長へという暗黙の了解が皆の中で定着していた。最初に誰が言い出したのか、誰がお願いした訳でもなかったが、少年Aも特に異論無くそれを受け入れていったらしい。
最後まで一緒に残っていたという少年Bも、委員長に限ってこんな事件を起こすなんて有り得ないと、皆と同等の意見だ。救出された直後、混乱した状態で「これは何かの間違いだ」と声を上げる姿が印象的であった。
学級委員を務める優良な生徒が、担任教師の子供を誘拐し、その上殺害まで犯す。周りの誰しもが何の予兆も感じられなかったのは、果たして本当であろうか。我が子を殺害された担任教師は、自らの手で復讐を決意するが未遂に終わった。
しかし、実はこの時担任教師が子供の死を知る機会は皆無であった。堂々と登校してきた少年Aの態度から判断できたと、後に彼は語ってはいるが。それはあくまでも予想の範囲内であり、断定に至るまでには及ばなかったはずだ。普通の親であるなら、少しでも子供はまだ生きていると希望を持ちそうなものだが。復讐を決めた時点で、それよりも前に死の事実を知らなければ、このような行動には移せないはずである。そう疑問を持ったのは、私だけであろうか。
少年Bによると、先生は最後まで子供が生きていると信じていたという。犯人もまだ誰かは分かっておらず、その犯人を特定する為のアンケートであったのだと。しかし、担任教師は少年Aの登校時に断定したと証言しているので、ここでも矛盾が生じることとなる。それとも、死の事実を知らないのだとすれば、復讐とは誘拐に対してのことだったのか。
この事件は不可解だ。事件の概要を知れば知る程、謎が深まっていく。この事件の本当の意味での解決は、いつになるのだろうか。どれだけ時間が掛かったとしても、きちんと最後まで解決してもらいたい。何故かこの事件には、見えてこない闇がまだまだ隠されているような気がしてならない。
また つづく。