「アンケート」③ | My-Hero

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ヒーローに憧れた夢。

いやー、実はな。皆には迷惑をかけたくないから内緒にしておこうと思ったんだけどな。いいか、皆。落ち着いて聴いてくれ。実は…先生の子供が誘拐されてな。


おいおい、落ち着けって。騒がしくするな。他のクラスの皆が不振がるだろ。誰か見に来たらどうするんだ。おーい、いいかー。皆ちょっと先生の話を聴いてくれ。こっちの要求を呑めば、子供には一切手を出さないと言ってきている。だから大丈夫なんだ。


警察には、ちょっと色々事情があってな、まだ言ってないんだ。や、待ってくれ。通報するときは、ちゃんと先生の方からするから。それまでは皆も黙っていて欲しい。家の方にも言わないでくれ、頼む。命が、かかってるんだ。ありがとう、先生は大丈夫だ。


そう、その犯人の要求がこのアンケートって訳だ。クラスの人数分のアンケートと引き換えに、子供を還すと言ってきている。皆、お願いだ。今は何も言わず、アンケートを答えてくれ。


この事件が解決したら、皆には真っ先に全てを報告する。約束する。だから、それまでは、皆の胸の内に留めておいてもらいたい。


犯人からの要求には、事細かに指示が加えられていて。先生はアンケートを見てはいけないし、内容を教えてもらうのもNG。そうなんだ、警察へも通報するなと言われてしまって。それらが一つでも発覚した時点で、子供を殺害すると言ってきた。皆に事情を話すのも本当は駄目だったんだ、すまん、先生を許してくれ。


で、皆どうだろうか?書けた人がいたら、もう帰っていいんだぞ。誰もいないか?期末試験じゃあるまいし、アンケートなんだから、自分の意見をそのまま書けばいいんだ。難しいかな。本当のことを書くのは難しいか。でもな、それで救われる命があると思って、みんなどうか協力してくれ。この通りだ。


ん?どうした?どうしても書けない?私は先生が好きだから?だったら、尚更アンケートにいっぱい書き込んでくれ。それが先生の為になるんだ。お願いだ、先生を助けてくれ。おい、泣かなくてもいいだろ。大丈夫か?すまない、先生のせいでこんな…こんなことに捲き込んでしまって、本当にごめんな。


犯人は、俺が絶対許さないから。





また つづく。