あれから三日経った。私の携帯はまだ着信していない。やっぱりあれは何かの間違いだったのかな。もう終わったことなのか。というか、何も始まってないか。こういうの初めてだったから、良く分からないけど、そういうものなのかもしれない。
一人でワイングラスを傾ける、ここは都会のとあるバー。まさか一人で来る訳ない。会社の上司に指定された待ち合わせ場所が、ただここだっただけ。当人は呼び出しといて、少し遅れるらしい。
一人?
え?
ここ、いい?
あ、待ち合わせしてて。
じゃあ、その人が来るまで。男?
え?
ここに来る人。彼氏?
か、会社の上司です。話があるからって呼び出されて。た、たぶん次回のプロジェクトの話かと。
へ~。仕事できるんだ。
もうバリバリ。仕事に生きてるような人で、着いてくのに必死です。
仕事できるって言ったのは、君のこと。羨ましいな、その上司さん。こんな優秀な部下に慕われてて。
私が?私なんて全然ダメダメですよー。
でも期待されてる。
んーーー?
大丈夫。頑張ってね。
あ、ありがとうございます。
ねぇ、今度さ、俺と待ち合わせしてくれない?
え?
その日は俺が待ってるから。
あの…
番号教えて。
ばんごう?
携帯の。
あ、090……
鳴らすね。
あ、はい。
それ、俺の番号だから。
はい。
名前は?
ヒロです。
ヒロちゃん。じゃあ、また。
また。
ナンパ?ってゆうのかな。あの人酔ってたんだよね、きっと。こんな感じで番号交換したのは初めてで、どうしたらいいか分かんないけど。でも、少し、また会いたいって思ってしまったから。本物の番号が口から出てた。もう少し話したいなって思ったから。
間違いだったのかな。私じゃなくて、向こうの間違いだったとか。このまま、なのかな。こっちからかける勇気はない。でも待ってても意味はない。でも、でも…
そのとき携帯が光った。あの日の番号が、私の携帯で光ってる。また会えるかもしれない。また話せるかもしれない。電話って相手の顔が見えないから、好きじゃなかったんだけど。この電話は私が招待したんだよね。
もしもし?
今日、待っててもいい?
え?
あのバーで、今から待ってる。
あ、はい。
ヒロちゃん、電話出てくれて良かった。
招待…
ん?
いえ。すぐ行きますね。
待ってる。
変わろう、自分。今日から。
進んでみよう、今から。
小さな勇気で
小さな奇跡を招待。
では いってきます。