「FUN LETTER」vol.3 | My-Hero

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ヒーローに憧れた夢。

真っ白い封筒に、青空の便箋

黒いペンで

「拝啓」から始まり

「また 書きます。敬具」で終わる。



私には、ヒーローがいる。

彼は何をしても男前。なんでそんなにカッコイイんだろう。彼から滲む表現に、毎回キャッキャしちゃってる。


雪の季節に思い出す、ヒーローの誕生日。どうにかして、当日「おめでとう」を伝えられないかな。ピッタリ当日届くように、今から手紙を書くっきゃない。私は今、やるっきゃない。


寒い夜、こたつで書き物。誕生日、おめでとうございます。彼をこの世に誕生させてくれたご両親にも、感謝の意を表したい。ありがとうございます。


投函➡集荷➡配達➡ヒーロー?
計算するとだいたい、私が書いた4日後に届くってことかな。まぁ本人の手に渡されることはないだろうけど。でもどうせなら、誕生日当日に手紙が到着したら、綺麗だよね。


字が下手っぴだから、本当はパソコンで打ち出したいとこだけど。書いた文字の方が、より気持ちが伝わるような気がして。恥を忍んで書き綴る。


想いを込めた青空の便箋は、3つに折り畳む。送り先を明記した、真っ白い封筒に入れる。最後に切手を右下に貼って、出来上がり。これがいつものスタイル。


ポストへ祈る。どうか当日、届けてください。手紙にも祈る。頼んだぞ、任せたよ。


暗闇の中で、僕は目覚める。時々忘れた頃に、上空から光が差し込まれ、手紙や葉書が降ってくる。この暗闇は、ポストなのだと誰かが言っていた。いよいよ僕にも、この時がきたんだ。


何回か光った小さな長方形ではなく、巨大な正方形の光が僕を包んだ。大きな袋が閉じられると、ガタガタと揺れながら、どこかへ運ばれてゆく。


機械が僕らをバラバラにして、目的地別に振り分けていく。僕が目指すは東京だ。さっきよりも、たくさんの仲間と共に乗り込んだ。今度はバイクじゃなくて、車だ。


ずいぶん長い間、揺られていた気がする。群馬ー東京間は思ってたよりも距離がある。ようやく僕らを乗せた車のエンジンが止まった。久しぶりの光が眩しい。また振り分けられて、またバイク用の大きな袋へ。緊張するな。どんな人に受け取ってもらえるんだろう。


ダンボール!?ここが僕のゴール?せっかくここまでやって来たのに、誰も読んでくれないの。

「頼んだぞ、任せたよ。」

こんなとこで諦めちゃダメだ。あの子は真剣に書いたんだ。あんなに本気で書いたんだ。本気で読んでもらわなきゃ。んんんんんー、えいっ!


あれ、1つ落ちちゃってる。よっと。あれ、これ先輩宛てじゃん。おはようございます。センパーイ、これ、届いてましたよ。いいっすねー、ファンレター。俺も欲しいなー。



おぉー、わざわざありがとう。てかなんでお前が持ってんねん。


打ち合わせしてた部屋にたまたま落ちてたんすよ。偶然っすね。


すごいな、それ。ありがとうな。


おっ、ファンレター?今日ってお前の誕生日やろ?良かったやん。俺も書いてくれば良かったなぁ。


なんでやねん!てか、今日俺の誕生日やったんや。めっちゃいいプレゼントもらったわ。


この人だったんだ、僕を待ってたの。良かった、ちゃんと届いて。もう大丈夫。この人なら、ちゃんと最後まで僕を読んでくれるはず。あの子が書いて、この人が読む。産まれてきたのが、この手紙で良かったなぁ。

誕生日、おめでとう。





「FUN LETTER」編vol.3 完。