「サヨナラのかわりに」⑤ | My-Hero

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ヒーローに憧れた夢。

もういないよね。待ってる訳ないよね、私のことなんか。彼にはたくさん酷いことしてきたもんな。彼をたくさん傷付けてきた。彼はなんにも悪くなかったのに。



それどころか、私を守ってくれてたじゃない。周りからどんなことを言われても、白い目で見られようとも。友達にからかわれても、それを失うことになっても。私から逃げずに、ずっと一緒にいてくれた。



逃げたのは私の方。私は、この町にも逃げてきたのに、ここからもまた逃げようとしていた。居場所がどこにもないって思ってたから。ずるいよね、貴方が側にいてくれたのに。



彼の気持ちにも気付いてた。だけど、信じることができなかった。彼に信じてもらえてる私を。自分が嫌で嫌で仕方なかった。この世界から消えてなくなりたかった。

「同じ世界では生きられない」

最後に彼に言った言葉。バカにされたと勘違いしたよね?あのとき、また顔がムスッとしたもんね。私って、伝えるのがほんと下手。素直じゃないのよね。可愛くないよね、こんなんじゃ。



町を嫌いになったことはない。町の人を恨んだこともない。腐ってたのは、私の家。町を見下し、馬鹿にしていた。



ゴミの日を教えてもらえなかった自分達の態度は省みず、幼稚な悪戯と蔑んだ。あのとき心を入れ換えてれば、まだ良かったんだけど。うちがあの時どうしたかというと、ゴミの回収業者にわざわざ自宅まで取りに来させた。嘘みたいな話だけど、全部ほんと。



毎月いくら回収業者の口座に振り込み、それとは別に、毎回運転手にいくら渡してたのかは知らない。知らないけど、たぶんそっちも嘘みたいな金額。



「決まったゴミの日がちゃんとあるんだから、教えてもらえばいいじゃない。お父さんたちがきけないなら、私がきいてくるっ」

「よしなさいっ」

「そうよ、みっともないわ。」

みっともないのはどっち!?アナタタチ夫婦の方がよっぽど汚い。

「あなたは何にも心配しなくていいの。ちゃんとお金払ってるんだから。ね?あなた。」

「あぁ、多目に払ってやってるんだ。向こうだって、うちが無くなったら今更困るだろ。」

サイテー。なんでもかんでもお金でしか物事を考えられない。ある意味可愛そうなのかも、この夫婦。そして、そんな二人から産まれた私。私も、最低家族の立派な一員。



綺麗な貴方と、汚い私。同じ世界で生きられる筈がない。分かってる。分かってるけど、好きだった。彼のことが好きだった。気付いたときには、もう気持ちを沈めることはできなかった。大好きだった。私とみんなの世界を繋いでくれる、彼が私の全てだった。





また つづく。