拝啓 切手様
情報通新技術の進歩が著しい、私達が住むこのIT社会。ペンを走らせる機会は恐ろしく激減した。筆記用具の中でも、鉛筆が主流だった時代はいつぞのことか。今やその座をすっかりボールペンに譲ってしまった。最近ではその姿を見てすらいない。昔は、筆箱の中では鉛筆が一番大きな顔をしていたものだ。鉛筆削りで、きちんと先を尖らせた鉛筆。芯が折れたら、その日はそこで御役御免でったあの時代。非常にノスタルジックだ。
個人的に一番格好良い筆記用具は、ボールペンよりも“万年筆”であると考えている。あの流れるようなフォルム。あの流れるような書き味。生涯の中でいつかは自分専用の万年筆を、手元に置いておきたいものだ。
そんな万年筆で手紙を書いてみたいと、私は常々考えている。なんとも渋い文章になるであろうこと請け合い。そんな手紙を送ってみたい。気持ちがより伝わるような気がしてならない。
私は手紙を書くことを大切にしている。字が下手なので、普段は恥ずかしくて書き物は避けているのだが。手紙だけは別格だ。自分の言葉を認めると、清々しい気分を味わうことが出来る。綺麗な字が書けたのなら、もっと爽やかな気分に違いない。
文字は人を表すというが、私の文字は子供のそれの様である。どうか私の文字で、私の態を思わないで欲しい。
ということで、私の中で「手紙」というものは特別な意味を持っている。
実は今日も一通書き上げたところだ。相変わらず汚ない字で耳を赤らめながら、それでも最後までなんとか書き上げた。私の想いを認める。想いは言葉に乗って。言葉は手紙に乗って。後は切手を封筒に貼り、投函するだけと相成った。
待っててね、私のポストちゃん。
ヒーロー、
本当に貴方に
言葉の手紙が
届いたら
いいのにな。
では いってきます。 敬具