昨夜、『三毛猫ホームズ』を読み終えて

まだ寝るまでに時間があったので

次の本を手に取ってみました。


丸山正樹さん『ウェルカム・ホーム!』。

大森康介は特別養護老人ホームで働く職員。
何度めかの派遣切りにあったあと、
資格を取って介護の仕事を始めたのだが、
仕事はキツイし自分の臭いが気になるし
我侭な入居者には振り回されるしで、
お金を貯めたら辞めてやる!と考えていた。
ある時、拒食気味の入居者がなんと夕飯を全て食べたという。
その日はエレベーターの故障で配膳トラブルがあった日。
その入居者はその日の夕飯だけは完食したが、
また食べなくなってしまう。
なぜその日だけ食べてくれたのか。
考えていく内に「入居者」も一人の人間だ、と
気付く康介。
毎日がトラブルだらけながらも、仕事のやりがいを
感じ始めていた時、ある事件が康介を襲うーーー!


と、長いですがあらすじはこんな感じでしょうか。
日常の謎もちょっぴり入った、
お仕事小説です。

栞を挟むことなく、一気読みしました。
前半は康介の成長が感じられて、
ボロ泣きしました。
うん、そう、施設側からしたら「入居者」だけど、
彼ら彼女らもご自分の人生を精一杯生きていらした
「人間」なんだよね、と。
まさか、アンパンマンの歌で
泣くとは思いませんでしたが。
深いな、アンパンマン…。

ターミナル(看取り)とか、認知症の進行とか、
面会にほぼこない家族とか、
麻痺で言葉があまり通じない方とか、
辛い場面も出てきます。

特に、最後に起こった事件は、
入居者さん側からの悲痛な想いや
大切な家族を預けた旦那さんの
言葉にならない悲しみや憤りを感じます。

入居者さんのことを第一に考えて
美味しいご飯も食べてもらいたい、
オムツ交換も頻繁にしたい、
お花見や温泉にも連れて行ってあげたい…。
そんな気持ちと、
人手が足りなくて
緊急度が高い方を優先せざるを得ない、
効率重視になってしまう、
という介護現場のジレンマが垣間見えて
苦しくなります。

これから介護されることになるかもしれない方、
介護する側の方、
高齢になろうとする親を持つ子ども、
(つまり全ての方)に読んで頂きたい本です。

悲しい、辛い場面だけじゃなく、
クスっと笑える所もありますし
文体が軽やかで内容は重くても重くなりすぎない。

あたしは知らなかったのですが、
この作者さんはろう者の両親の元で育った
聴者を主人公にしたミステリも書かれていて、
シリーズ化されているのだとか。
そちらも図書館で調べて予約しました。


まだまだ、介護士って
下に見られがちな感じはしますけど、
その人のもしかしたら最後になるかもしれない
人生の一部になれる、って凄いことだと思います。

本当にこの本、
高齢者向けの施設(という言い方は嫌いですが)
に1冊は置いてほしい。
そのくらい、感動した本です。