この日は少し寒かった。パターソンというジムジャームッシュの映画を見たばかりだった。





詩を書くのが好きな青年の生活のストーリーで、物語の中では大した出来事は起きない。

だが、最後にその詩のまつわる事で、悲劇が起きる。

彼は、社会や生活から取り残される。詩を書く事で呼吸をしてるようなところがあったからだ。




しかしラストにささやかな、ほんのささやかな奇跡が起きて、彼はまたペンを走らせる。


日常生活に色をつけに、カメラを持って車を走らせた。


キハを追った。



カメラを設定して来るのを待った。



キハはゆっくりと走り、トンネル手前で減速して、

パーンとクラクションを鳴らして去っていった。


そのたたずまいは人生そのものだった。

海に面したゆるやかなカーブを、ゆっくりと弧を描いて去っていった。




しばらくその場にいて、それから一歩一歩あるいて車に戻る。


エンジンをかけるとピアノのみずみずしい音が鳴り響く。


目をつぶって音を追った。

口元がほころぶ。


車を走らせて家路に着く。