未成年の飲酒は法律で禁止されているタカです。


ワンマンから数日、久し振りにバーでテキーラサンライズを飲んだ。


テキーラとオレンジジュース、そしてグレナデンシロップを加えたカクテルだ。

ロックに絡めて言えばストーンズのミック・ジャガーが愛した酒として知られていたり

イーグルスの曲のタイトルにも使われている。

ロックとはちょっと違うが、映画のタイトルにも使われた。
メル・ギブソンが主演だったかな。



僕らの曲に「ラムコーク」というものがあるが

僕の個人的に最も思い入れの深いカクテルはテキーラ・サンライズである。

そんな話をしたい。



ちなみにこの国では未成年の飲酒は法律で禁止されている。

そして、この国では私的制裁は憲法によって禁止されている。

なのでこれから書く物語はフィクションであり、実在する人物とは無関係である。

断じてフィクションなのだ。

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僕は高校生の頃、ガソリンスタンドでバイトをしていた。

工業団地近く、それなりに車通りの多い県道沿い
よくある田舎のガソリンスタンド。

暇なタイミングを見て車の運転を教えて貰ったり、オイル交換やタイヤ交換、パンク修理などの簡単な作業を教えて貰っていたが


セルフのスタンドなので仕事といえば基本的にレジでの精算がメインである。

店内は基本的に二人体制、
土日祝日繁忙期、または整備の予約が入ると三人体制になる事もあった。

お客さんが給油ボタンを押すとブザーが鳴り、レーン番号と油種を確認して給油許可のボタンを押す。


給油の終わったお客さんが店内へやってきて、精算をするまでの間の時間が、その店でのもっともありがちな時間である。


そんな時間の中で防犯カメラ越しに女の人の足をジッと見つめる店長。

元ヤン丸出しの店長は当時42歳前後だっただろうか、
背が高く、茶髪のリーゼント、小顔で鼻の高い男前、明るくひょうきんでスケベなオッサンである。


「おいタカ、見ろよあのネーチャン、いい脚してんなぁ…おめぇちょっと舐めさせて下さいって言って来いや!」

「嫌ですよ、店長が自分で行ったらいいじゃないですか」

「ばっかおめぇ、俺が行ったら犯罪になっちまうんべな!」

「俺が行っても犯罪ですよ!」

「バッカだなぁおめぇ、若ぇ奴は何やったって許されんだよ!俺が若ぇ頃なんかなぁ…」


と嬉しそうにニコニコと武勇伝を話し始めるのが大体の流れだったのだ。

僕はその武勇伝が好きだった。

「地元の暴走族の総長だったけど、腰が痛くてバイクに乗りたくなかった」とか

「高校3年間はずっと自分で車を運転して登校していたけど、全くバレなかった」とか

「喧嘩だかタバコだかで停学になった際、ムカついたので校長の車のボンネットにウンコしてやったよ」

とか何だかよく分からないのだ。



念のため書いておく、暴走行為も無免許運転も決闘も未成年の喫煙も法律で禁止されている。

ボンネットにうんこも多分だが法律で禁止されているだろう。



とにかく、悪い人というより面白いクレイジーな人という印象だった。

しかし整備士のオカモトさんは彼が本当に地元で一目置かれた人物だったと知っているらしく

「あの人、ホントにおっかなかったんだから、絶対怒らせんじゃねえぞ」

と穏やかな口調で忠告してくれた。


僕がバイトを始めた少し前の話だ。

当時のアルバイトの一人がレジからお金を盗んでいた事がバレたらしい。

店長とオカモトさんとアルバイトの三人でシフトを回していた時の事だった。

オカモトさんは今夜中に仕上げなくてはいけない車の作業をしながら電話でお客さんに状況を説明していた。


「てめぇ!ちょっとこっち来いよコラァ!」

店長の怒号に驚いたオカモトさんはガレージから店内を見ると、
髪の毛掴まれたアルバイトが事務所へ引きずられていく光景だったそうだ。


数分後、血まみれのアルバイトが裏口から出て行くのを見たそうだ。


「あれはびっくりしたぃなぁ〜、トイレんとこに奥歯落ちてたもんなぁ〜」


と、穏やかに笑いながら話していたのを聞いて

僕は絶対に店長を怒らせないと心に決めたのだ。



ファンキーな人が多い職場だった。


穏やかなオカモトさんも昔は髪の毛がツンツンだったようだ。
当然、群馬が生んだロックスター・BOØWYの大ファンである。


走り屋のナカムラさんはガソリンスタンド場内でドリフトの練習をしていた。



大学生のマディさんはゴミ箱漁って缶コーヒーの応募シールをひたすら集めていた。
ボスジャンが欲しかったらしい。


紅一点のワカコさんは23〜4歳くらいだったか

金髪ストレートでぬいぐるみだらけの軽自動車に乗ってくる。
今日もスウェットにピンクのキティちゃんのサンダルだ。

「おう、ワカコ!今日もブスだな、一発ヤらせろ!」
「うるせぇエロジジイ!死ね!」

と、店長といつもの挨拶を交わして事務所でマルボロメンソールに火を点けるのだ。


書いてて思ったけど、漫画みたいな職場だな…



そんなファンキーな職場で僕は人生で尊敬してやまない

"ダイスケさん"

という先輩に出会ったのだ。

後半へ続く…