どうも、へへいへーいです。

一旦noteの方に引っ越そうとしたのですがどうも長文を書くと使い心地が悪いので、長くなるときは相変わらずAmebaでいきます。


というわけで試写会が当たったジュマンジを見てきたんですけど、一言で表すと「アメリカの無」って感じでした。

普段ツイッターを見ている方は「こいつ遂にブログでもdisり芸をやるのか」と思うかもしれませんが、内容は特に文句ないです、普通の映画です。

ジュマンジが他の映画とひどく違うところは、今まで我々が慣れ親しんできたハリウッド映画に有った夢や希望や欲が恐らく一切無いのです。
今回のジュマンジ、試写会が全国で大人数を募集していてツイッターでバカ映画を見てる人達が結構たくさん当選していたのですが、確認する限りほとんどが「普通に面白かった」「特に感想はない」等で、「アクションが凄かった!」「あのシーンやあのキャラに感動した!」等のコメントがほとんど流れていません。
エンタメというのは妄想や夢や欲を魅せる商品で昔からジャンルや売り口をドンドン開拓してきた商売でしたが、ジュマンジはそういった娯楽としての目的や在り方を誇示するシーンが無いんです。
言ってしまえば「無映画」に近く、従来の映画からは大きくかけ離れています。
勿論予告や宣伝通りのアクションやアクシデントはあります、ロック様の筋肉もたっぷり見れます、でもそれらを価値あるものや夢として見せたり、更に言うとこの映画の大筋である「ゲームの世界で万能になって理想の人生を過ごす」という見世物としての主軸になる要素の肯定すら行われてないのです。

ではジュマンジのテーマは何なのか?

この映画は有りがちなアメリカ高校のスクールカースト間の隔絶や格差社会を冒頭に、ジュマンジのゲーム機一式を起動してしまうところから始まります。そして主人公はロック様になるわけですが、あまりに理解しがたいことに主人公一行はロック様の身体を手に入れたことに大した反応を示さないのです。
知らない人に説明するとロック様ことドウェインジョンソンはWWEの世界王座云々を制覇し欲望と不祥事渦巻く90年代アメリカで不動の地位を手にしたアメリカでは言わずと知れたスーパースター、更に持ち前の演技力でこの映画の前にも数々のヒット作を打ち出し、素晴らしいトーク力であらゆるテレビ局からオファーされ、アメリカの最もホットな男性に選ばれた、老若男女問わず絶大な人気を誇る正に「アメリカ国民の中のアメリカ国民」という方です。これが20世紀なら映画会社はシュワルツェネッガーやスタローンのように国賓としてひたすら持ち上げる映画を作っていたでしょう。
しかしそのロック様を大きく持ち上げず、まるで「普通のマッチョマンアバター」として扱ってしまうのです。その後も映画はロック様の身体を持つオタクの主人公が考えを披露したりチームワークを見せたり恋愛や人間関係のシーンがあったりと、相変わらず従来のハリウッド映画的要素は強調されることなく進んでいきます。
最終的にオタクの主人公とジュマンジ内でセクシーキャラだった女の子が付き合うのですが、正直リアルの女の子はそんなにかわいくないです。はっきり言ってこんな話従来のアメリカではウケない筈です。
ここまで書けばわかると思いますが、この映画は「等身大の自信を持ち良好な隣人関係を築いて、身の丈と個性に見合う幸せがほしい」という様な感じの、如何にもアメリカ「らしくない」映画なのです。

そんな映画がヒットというのはどういうことなのか。

要はアメリカ人は娯楽や幻想の中でさえ昔のように大きな夢を抱いてないのです。
もしかするとアメリカにはかつての上昇志向とそれを肯定する文化や精神すらもう残ってないのかもしれません。
なぜアメリカがかつての熱意を失ったのかははっきりとは分からないのですが、もはやアメリカにはかつての夢はなく、人々(特にティーン)の中には「等身大の自信を持ち良好な隣人関係を築いて、身の丈と個性に見合う幸せがほしい」という庶民的な願いが漂ってる様に思います。
マーベルも強大な敵を打ち倒すことよりも人間関係や個人の主義主張の討論ばかり持ち上げられ、ヒット作は大作映画から芸術的で物語の良く出来たドラマへと移り変わり、明らかに20世紀の様なアメリカ的成功精神の肯定から平和で細やかな夢へと変化しており、この流れはかなり現実味があるのではないでしょうか。

多分これは似たような客層の多い日本でもそこそこヒットすると思います。大きな成功や栄光より身の丈の幸せや平和な暮らしに憧れる日本人は多いですし。

しかしこんな映画がヒットするアメリカは果たしてアメリカなのでしょうか
エゴや欲の肯定で発展していたアメリカ、80年代アメリカの名作の一つ『トランスフォーマー・ザ・ムービー』はこんな一節を生みました。
「善を越え、悪を越え、貴方の最も荒々しい創造力をも越えて、」
大きな成功も不祥事も含めて前に進んできたアメリカとハリウッド、次はどんな事が起こるかという期待に溢れていた20世紀
一体何がアメリカから夢と競争力を奪ったのか

嘗ての前進する力を手放そうとしているアメリカに不安を抱かずには居られない、ジュマンジはそんなことを考えさせられる映画でした。

興味がある人は止めません
ギャグも冴えてて話も分かりやすくて、敵はゲームのキャラなのでやっつけても見てる側にストレスは一切ありません。
動物への暴力も昼ドラ展開も深いテーマも無く、映画のラストはキャラクターの抱えてた細やかな問題や現実にもある悩みにふんわりとした解答を示しながら終了です。
それでももし観賞後に何か思うところがあれば、もしかするとそれが今のアメリカに足りないものかもしれません。