週末の映画修行は『マンチェスター・バイ・ザ・シー』。ちょうど1年前の作品で、アカデミー賞の主演男優賞と脚本賞を獲ってましたね。そもそも、イギリスの話だと思っていたら、タイトル名は、アメリカの北東部に実在する街の名前なんですね。いや、とても良かったです。地味な作品ながら、深夜に観終わって、心にズンと沁みました。

 

物語は、配管修理などの便利屋稼業で生計を立てる、無愛想で暴力的な主人公の、現在の虚無的な生活と、平穏だった過去の想い出とが、カットバックで交互に描かれながら、核心に向かって進行していきます。やがて明らかになる、過去の壮絶な出来事。自身の過失が招いたその取り返しのつかない悲劇が、彼の心と人生を破壊したのだということを、ようやく我々は知ります。

 

この悲劇の回想シーンで流れてくるのが「アルビノーニのアダージョ」。これほど映像と音楽が合わさって悲愴感を煽るシーンというのは、なかなかないでしょう。茫然です。鳥肌です。音楽の力は凄い。そして、さすがオスカー主演男優賞。その眼差しと、表情と、佇まいで、観る者を物語の世界に引き込むケイシー・アフレックの演技も、これ以上ないはまり役。

 

最後まで何かが大きく解決する訳ではないこのストーリーには評価が分かれるところかと思いますが、監督自らはこうコメントしています。「主人公は最後には少なくとも人間性を取り戻しつつあるんだ」と。そしてこの映画の終わり方を「ハッピアー・エンディング(最初よりはハッピーになっているエンディング)」だと表現しています。そして人生は続くのです。

 

よろしければ、ぜひ。

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『マンチェスター・バイ・ザ・シー』予告編

 

'Manchester by the Sea' [2016] Soundtrack: "Adagio Per Archi E Organo in Sol Minore"