昨夜の映画修行は ケン・ローチ監督「わたしは、ダニエル・ブレイク」。去年のカンヌでパルムドール(最高賞)を受賞して評判になっていたが観そびれていて ようやくAmazonで観賞。泣けた。本当に素晴らしくて 心の底から感動した。たぶん去年公開の洋画ではダントツに良かったのではないかと思う。
心臓の病気で働けなくなった主人公ダニエルと 彼がたまたま知り合ったふたりの子供のシングルマザー ケイトの物語。それぞれ国の援助を必要としているにも拘らず お役所的な複雑なシステムや理不尽な対応がそれを阻む。日々追いつめられていく彼らの姿を通して監督は 底辺にいる実直な人間が生きられない社会とは いったい何なのかということを問いかける。ドキュメンタリーのようなリアルさと 淡々と抑えたトーンの奥には 弱者の魂の叫びを代弁する彼の 煮えたぎるような怒りが潜んでいる。
イギリスの物語ではあるが 日本も他人事のテーマではない。持てる者と持たざる者との格差がますます広がる社会の中で 人間としての尊厳を貫くことの尊さと厳しさを突きつけられる。名もない個人のアイデンティティ。それが作品タイトルの意味であり 監督の主張そのものだ。
決してハッピーエンドではないが ラストシーンに救いと勇気を感じたのは自分だけではないだろう。この作品は あらゆる立場の ひとりでも多くの人に観て欲しい。