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凄いものを観た。
本日の映画修行は 白石和彌監督「彼女がその名を知らない鳥たち」。沼田まほかるの原作小説の映画化作品。もともと沼田まほかるはほとんど読んでいて この小説も内容を知っていたので 映画化にあたっては あの話がどう映像になるのか確認するくらいのつもりで観たのだったが これがとんでもなかった。

主演の阿部サダヲと蒼井優の演技力が凄まじい。最初は 二人とも原作とはイメージが違っていて どうなることかと思って観始めると 意外にもこれはもうこの二人しかなかったのではないかというほどのハマり具合。阿部サダヲも蒼井優も関東の人なのに 関西人が聞いてもほとんど違和感がないほど達者な関西弁で どうしようもないクズな人間関係を見事に演じきっていた。

こんなに人としてイヤらしくてブサイクな蒼井優は観たことがない。そして数々のエロい濡れ場も迫真の演技。一方 不潔で貧相で下品でみじめったらしいダメ男を演じる阿部サダヲの役者魂がさらに凄い。フィクションの映画を観ていたはずが 途中からヤバいドキュメンタリーを観ているような錯覚に陥るほどの生々しい迫力に満ちた空気が劇場内を支配する。

もうストーリーのほとんどは 不快で腹立たしくて 胸糞悪くなるような思いが募ってきたのが 終盤に一転。すべてはこのためにあったと言えるほどの ラスト20分過ぎからの展開は 結末を知っているはずの自分も もう涙が溢れて止まらない。場内もあちこちですすり泣き。これが「究極の愛」。もはやうまく表現できないが 単なる感動では済まされない別格の感情で心を鷲掴みにされ 激しく揺さぶられた。エンドロールでは放心状態。間違いなく今年の邦画ナンバーワンだろう。