一人暮らしを始めて一番変化を感じたのは、ただいまにおかえりと返ってくる声が無くなったことだ。
両親と三人の弟妹に囲まれて過ごしてきた実家は、思えば帰ると誰かしらが迎えてくれた。私の帰りはいつも遅かった。
おかえりと言う機会も年々少なくなってはいたが、住人が一人だけの生活では誰にも投げかけることのない言葉となった。
それが結婚してお付き合いしていた方と同居することになり、一緒に帰ることが多いため出勤日はただいましか言わないものの、
平日休みに私が旦那さんをおかえりと迎えることになった。
正直言って、そんな生活には少し、いやかなりむずむずしている。数か月経過するが、なかなか新鮮なのである。
旦那さんの出勤時間が私より何時間か早いため、潔く爆睡して送り出せないものの、
どんなに仲が良い時も複雑な時も、おかえりだけは言って迎えようと決めている。
たまにギャンブルに浮気されて帰りが遅い日は、不安やら腹が立つやらするものの、
迎える家族がいるという現状が、たまにじわりと心を満たす。


未来に待つ新しい家族にもおかえりと言える日が来るなら、その言葉だけは言ってあげようと思っている。
どんなに喧嘩しても、帰る場所だけは奪ってはいけないと思う。
その言葉だけは蔑ろにしない人たちと暮らしていたので、これは血を分けた家族との、誓いのようなものだ。
私自身が一方的に誓っているだけだけれど、この気持ちだけは忘れずにいたい。



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