災害で停電になってしまったことは何度かあるのだが、
ある日突然住んでいた地域が停電になってしまったことがある。理由は忘れた。
十年以上前、高校生の頃だったと思う。まだ現在の実家ではなく、団地住まいをしていた頃だ。
その日の夕方、小学卒業で別の地域へ引っ越していた幼馴染みが、
母親と共に久しぶりに団地へとやってきた。
我が家族は最上階、幼馴染みの一家はその一つ下の階に住んでいて、
どうやら団地の棟ごとで管理されていた生協関係で来たようだった。
退居した後もそのサービスを利用できていたのか分からないのだが、そんな用件だった気がする。
中学に続き高校もまったく別の場所へ進学しており、
ただ幼馴染みはスポーツでほんのり有名(※失礼だがとても、ではない印象)な高校に通っていたせいか、
制服もいいぞと思うブレザーで、正直ブレザー姿は似合うぞ。とか思いながら、玄関を開け出迎えていたように思う。
学校帰り、幼馴染みの住む地域まで何通りかのルートはあるが、
その一つが団地前を通過してもおかしくないため、同乗というか連れて来られた形だったのだろう。
母親を待つ間、顔を出しにきてくれたらしい。
再会はとても久しぶりで、それでも他の男子よりは過去の積み重ねがあるせいか話しやすく、
久しぶりーとか、小学の同級生の話をしたりと、玄関で話を弾ませ始めた、矢先だった。
あれ、なんか停電じゃない?と、キッチンにいた我が母が騒ぎ出し、ん?と玄関近くのスイッチをオンにしてみるが、
確かに電気が点かなかった。
えーほんとー?とか言いながら、幼馴染みを残し、自分の部屋の窓際に向かいその先に見えるT字路を確認しに走る。
信号が停まっており、開始から何分も経たないうちにT字路は大混雑していた。停電確定である。
ほんとに停電っぽい、とか言いながら、幼馴染みのいる玄関へ戻り、外に出てみようか、という流れになった。
玄関を開け、何歩か階段を下り、踊り場の大きな窓を開ける。
二人並んで少し上半身を傾けながら、さきほど見たT字路とは反対方向の景色を見てみても、やはり違和感を感じる何かがあった。
季節も忘れてしまったが、明るい夕方といった時間、ほんのり涼しさを感じる空気の中、
並んで外の景色を見ているその時間が、なんだか妙にくすぐったく、
そしてなかなか無いシチュエーションだから、もう少し続け、なんて、停電中だというのに罰当たりなことを考えていた記憶がある。
それから間もなく停電に気付いた幼馴染みの母親と合流し、彼は帰っていったたわけだけれど。
停電の度に思いだす、なんともいえない不思議な記憶としてその後も残ることになった。
恋に似たような感情だったかは忘れたが、友達としていいなこの空気、に、近かった気がする。
(C)Aoi Tact