私は喧嘩が苦手だ。正確に言うと、喧嘩になりそうな状況が苦手だ。
ほとんど、喧嘩に発展しそうになると、私から折れている。
何故かというと、喧嘩に発展すると、ありとあらゆる言葉を使って、
相手をこてんぱんにしようと頭を働かせてしまうからだ。
この言い方だと少し遠まわしすぎる気がするので、改めて言い直すと、
どこまでも口が悪いということを、自覚しているためである。
いろいろ言い切った後に後悔するのが嫌なため、言わない。
戦う前から負けに行く。私は大いに結構である。
私のこれは自惚れで、私が思っているほどに、他人は私の言葉に傷付かないということも、十分ありえるかもしれない。
しかしそれでも極力言わないようにしている。心中穏やかじゃなく思っていても、言わない。


懺悔すると、私は小学四年の頃、近くの席に座っていた男子を泣かせたことがある。
漢字の小テストで、たまたまその男子の点数をちらっと見てしまい、
しかも「点数低かったんだね~(もっと点数取れる人だと思ってたのに意外だ、という意味で口にしていたのだと思う。推測)」
といった、無邪気で残酷な一言を余計にぶっ放していた。
その男子は、個人的になかなか“やんちゃ”なグループにいるものだと思っていたので、
するっと出てきた私の一言に、何も言い返さずぐすっと鼻を啜って静かに泣いていたその姿に、
私のこんな一言で泣くのかと心底衝撃を受けて、思いっきり申し訳なくなった。
こうして今でも記憶に残っているくらいに。


差し出す言葉の受け取られ方の違いでさえ人を傷つけることを知ったため、
真っ向から喧嘩するということを避けるようになってしまったのかもしれない。
ただ私は、平和的に「自分から折れる」という選択肢を選んでいるようで、
相手が深追いしてくれることも同じくらい待ち望んでいるのではないかと思うこともふとある。
私はどちらかというと、とても好戦的だ。
そう見えないように意識していることもたまにはあるけれど、
どうしようもないくらい、好戦的なのである。
だからこそ私は、喧嘩が苦手だと言って、これからも回避し続けようとするのだろう。
 

 

 

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