尾行、張り込み、撮影の話ばかりしていたのでたまには聞き込みや分析関係の話もしておこうと思う。

 

興信所系の業者はもっぱらそれを専門に行うが我々のような業者にも時としてそのような案件が回ってくることもある。

これをこなせれば探偵としての格が上がるというものだ。

また浮気調査などでも調査対象者が中小企業の経営者というパターンは多い。

そのあたりでもさらなる業務への理解、技術向上につながると思う。

 

ここでは最もありがちな例として従業員10~300名程度の中小企業の信用調査をすると仮定する。

 

1,事前準備

まず表立って公表されている売上高、取引先などの情報であるがこれらはいわゆるオシントを使い取得しておく。

国内企業なら東京商工リサーチ、帝国データバンクなどで情報が取れるならそれは取っておいた方が良い。

しかしこれらの情報は一般人でも得られるのであえてこのレベルの為に我々に依頼してくるようなところは無いだろう。

我々にとって事前にオシントで情報を得ておくことはコスト削減の面で大いに有効である。

この段階で聞き込み以外では解決できない、あるいは聞き込んでもわかりそうにない、聞けそうにない部分を明確に分析しておく。

 

2,現地確認

会社、工場、支店その他、重要な拠点に足を運び観察する。この段階ではまだ関係者とは接触する必要は無い。

だがチャンスがあって面白い情報が得られそうなら軽く仕掛けてみるのも悪くはない。

この時、気が付いたこと、確認する必要があることを調査事項に追加する。

 

3,調査活動

事前に整理した情報を元に聞き込みを行う。興信所系の調査員は堂々と身分を明かして聞き込むことが多いが、我々はそうもいかないだろう。最も自然なシチュエーションを作り聞き込む。これは六ヶ条のうち謀、偽、執が必要になる。

例えば地方紙の記者であったり、インフルエンサーであったり、近隣住人であったり、元社員であったり、出入り業者であったり

その他様々なあり得る人間になりすまし聞き込む。

基本は『頭と腰は低くそれでいてさりげなく』になる。

聞き込みではわからないような内容は尾行で解決する。

安易に盗聴などに走ってはならない(代表者が社屋内での不正を調べる的な依頼ならそれも良しだが、そうであってもこれらの手段に頼るのは最終段階であって本当にこれ以外に解決方法が無いという時にだけ使うべきである)

 

4、分析と報告

全ての情報を整理しそこから分析した結果を報告書にまとめて報告する。

オシントで得た情報と現地写真だけでは素人と変わらない。我々としてはやはり人力でしか成しえない事を

追加しておきたいものだ。そのあたりは予算との兼ね合いもあるが

概して人力でしか成しえなかったことこそが

本当に重要で、知りたい部分であることが多い。

 

ヒント

簡単な指標

中小企業の衰勢は経営者の気質によるところが大きい。

安全な会社の経営者の例を挙げる。

 

人徳、技術力タイプ

人徳があり技術力があるタイプ。経営が下手で成長は鈍いとしても急な倒産などは無い。

人徳だけなら後述する消極型、犯罪型になりやすい。

技術力だけだとそもそも社長の器では無く調査対象にも上がらないであろう。しかし下請け業者としては優秀である。

 

数字重視タイプ

とにかく数字ですべてを判断し急成長よりも安全を望むタイプ。

いつまでも規模が大きくならないが急な倒産は起こらない。

 

コツコツタイプ

黙って結果を地道に積み上げているタイプ。派手さは無く目立たないが自分なりの勝ちパターンを見つけており

すこしづつ成長していく。消極的ではなく堅実なだけなので消極型でもない。

 

過去に倒産等を経験した中年タイプ

20代で起業し倒産を経験した後、30代、40代で再起業した者。

倒産のパターンや空気感を知っている為、同じ失敗はしない。

しかしこのタイプは上にあげた2つのタイプの内のどれか1つを持っていないと

何度も起業しては失敗するどうしようもないタイプに成る。

 

これらが代表的な安全な経営者である。

つづいて危険な経営者の例を挙げる。

 

名声型

わかりやすいのは宣伝に有名人やブランドなどを使いたがる者。自社と自社のサービスに自信が無いので他者に頼ってしまう。

このようなものは一時売れたとしてもその後、客は離れ、宣伝広告費に押しつぶされて倒産する。またJC,○○クラブ、○○協会

などの理事、会長等につきたがるタイプも同様で自社と自分に自信が無い。その自信はそのような名誉職で埋められるものではない。

 

消極型 

とにかく挑戦をせず、今までうまくいっていた方法を選ぶ。安全策でそうしているならよいが、周りの声が聞こえず

凝り固まっているタイプは周囲の変化についていけずフェイドアウトする。

 

嫌われ型

同業他社に嫌われている。やり方が汚い、人柄が悪い、異様に警戒心が強く疑り深い、これまで営業方針が道に外れている等

今は良くても続かないタイプで最終的には強権を持ったリーダーに締め出されてしまう。

 

犯罪型

目標達成のためには手段を選ばないタイプ。バレなければよい、もしくはやむを得ないという思考で脱法行為をいとわない。

このタイプも長続きはしない。

 

ファッション型

見た目にこだわり中身が伴わない。起業したなら9カ月以内に倒産する。

強い地盤がありそれを引き継いだ2代目、3代目がこのタイプだと一気に経営は傾く。

それでも持ちこたえられるほど盤石なら幹部や主要な従業員がやめていく。

特徴としては流行りの言葉を使いたがったり、メディアに安易に踊らされていたり、社内での権威をひけらかすために

設備投資をしたりする。

 

放漫型

やたらと調子が良い。大きな話ばかりで中身が無い。ゴルフ、キャバクラに精を出す。付き合う人間、会社を出入りする人間が

本業とかかわりのない人間が多い。商売よりもプライベートを重視する。このようなタイプは創業者にありがちである。

また、棚ぼた式に地位を得た人間、実力や能力でなく謀略で地位を得た人間もこのようになりやすい。

 

これらの特徴を頭に入れて依頼者へのヒアリング時に確認しておくとよい。

調査するまでもなく危険ない会社だとわかるだろうし、社長の素行調査など思わぬ仕事を得られる可能性がある。

 

 

次回も企業信用調査について述べる。