久々に、私という取扱説明書と言うことでお話をさせていただこうと思います。

警察時代は、父親が事前に手を回して等もあったわけですが、そうした呪縛から逃れたくて郵政に転職、その後は中等部訓練・転用試験共々父親の呪縛の無い状態で、己の力だけで切り開いてきたという自負はありました。

実際に、当時一緒に郵便局で働いていた同僚の女性からは、短期間の内に試験に合格していく様を見て、あなたは仕事するというよりも試験で上に上がっていくタイプやねと多少の皮肉を込めて言われたものでしたが、実際にテストを受ければ合格する・・・みたいな意識はありました。

その勉強も、実際に歩は殆どしていなくて。郵政大学は丁度郵政局に勤務していたこともあり殆ど勉強もしなかったらさすがに合格出来なくて心残りでした。

郵政大学を卒業していたら学士認定して貰えることが最初から判っていたらもっと頑張ったかもしれないのですが、当時はそこまで知識が無かったので。苦笑

まぁ、そんな戯れ言はどうでも良いのですが、そうして三段跳びのように、初級公務員で入った高校卒の資格しかない私は、その後の部内試験に合格して、近畿郵政局に転籍（部内転職）する事になりました。

現業機関ではなく完全な非現業機関でありそれまでの制服を着ての仕事から一転、管理部門の仕事と言うことで、国家公務員上級乙種の準ずる昔の軍隊で言えば准士官のような立ち位置になったと言えましょう。

もっとも、末席などは昔の軍隊で言えば、曹長のようなもので小間使いでしか無かったわけですが、それでもそこまで上り詰めたという思いはありましたし、組織は違えど、同じ管理部門（非現部門）での仕事と言うことで父親に近づき乗り越えていこうと思ったものでした。

父親も同じ思いだったのでしょう。

そんなある日、父親が郵政局に面会に来たことがありました。

偶々、近畿郵政局の建築部に用事があったようで、その後だったかに呼ばれて玄関まで迎えに行ったことがありました。

係長に、父親が来ている旨を話して席を外して、7階にある食堂で安いコーヒーを飲みながら話したものでした。

父親ともう一人連れていたのですが、会社の上司だったのか否かは判りませんが、しばし歓談をしたものでした。

父親は誇らしげに、息子が郵政局で勤務していることを話しており、この時ばかりは少しだけ誇らしい気持ちになるとともに、父親からの呪縛を離れて、自分の力でここまで上がってきたんだと改めて感じたものでした。

それまで散々追いかけてきた父親に追いついたというのが当時の正直な感想であったと言えましょう。

仕事中と言うこともあり、30分程で散会しましたが、父親にとっても満足のいく日であったようでした。

こうして、少しずつ父嫌の呪縛から離れていけたことは自分にとっても成長を実感できたと言うのが実感でしたが。

それでも、父親的には私は不可解な存在であったらしく、何を考えているのか判らないとよく言われたものでした。

恐らく、父親に対する畏怖の念と反発しようと言う気持ちとが重なり合って防衛本能的にそれが表面に出るので、父親からすれば何を考えているのか判らない・・・そんな息子に見えたのかもしれません。

ただ、人というのは恐怖（ここでは畏怖という意味合いで）があるとその恐怖から避けようとして防御反応で敵対的に反応したりするわけで巣ので、それが無意識的に表に出ていたのかもしれません。

こうした呪縛が本当に解けたのは、皮肉にも母親が亡くなってからで、もしかしたらグランドマザーの存在が私の中で大きな領域を占めていたのかもしれません。その後は父とは急速に和解できたような気がしています。

私と言う取り扱い説明書 第90話 郵政局に父が来た話

私と言う取り扱い説明書第90話　郵政局に父が来た話