晩夏になるとやたら目に留まるのが
サルスベリの花だ。
サルスベリは百日紅と書くだけあって
花が咲いている期間は長いけれど、
私の中では晩夏に咲く花のイメージ。
サルスベリといえば梨木香歩さんの
「家守綺譚」
主人公が家守りとして住まう屋敷の庭に
サルスベリの木がある。
そのサルスベリが主人公に恋をして
これでもかと花を咲かせてみたり、
ヤキモチを焼いたりと
とても感情豊かに描かれている。
【サルスベリという木は
木の幹をくすぐると
葉を揺すりながらクスクスと笑う。】
何かの本でそう書いてあったのを読んだ。
梨木香歩さんの家守綺譚のサルスベリは
実はフィクションじゃなくて
ノンフィクションなんだろうか。
ある時、街路樹としてサルスベリが
植えられている通りを通ることがあった。
急いでいた訳でもなかったので
ちょっとサルスベリをくすぐってみた。
なんと、びっくり
サルスベリは葉を揺すりながら
本当にクスクスと笑ったのだ!!
木が笑う
そんなバカな話があるもんか。
普通の人はそう思うでしょう。
でも、笑う。
クスクスと葉を揺すってサルスベリは笑う。
くすぐるのを止めると
笑うのもピタリと止める。
種明かしをする。
簡単なこと。
サルスベリの木は
猿が滑るほどにツルリとした幹だ。
そのツルリとした幹は振動を枝葉によく伝える。
つまり、くすぐった振動がそのまま枝葉を揺らして
それがまるで木が笑っているように見えるのだ。
最初、本当にサルスベリが笑ったと驚いて、
その後、何度もくすぐっているうちに
カラクリに気づいてしまった。
カラクリに気づいてしまえば
これほどつまらないことはない。
サルスベリの花を見るたびに
この一連の流れを思い出す。
そして、私の中での毎度の着地点は
京極夏彦さんの京極堂シリーズの主人公、
京極堂の決めゼリフ
「この世には不思議なことなど
何もないのだよ、関口君」
なのだ(笑)。