男は喫茶店の二階の窓から外を眺めていた。特に予定はなかった。コーヒーはとっくに冷めて、底が見えている。

ポケットから財布を出して中身を確認したがやはり千円札二枚しか入っていなかった。

昨日の警備のアルバイトでもらった一万円札が消えていた。夕べは仕事終わりに立ち飲みしてから、素泊まりの安ホテルに泊まった。あそこでやられたか。

それから男は、薄汚れた黒いジャンパーの内ポケットのジッパーを開けて、小さな工具を取り出すと、テーブルの下で、工具を確認してから、ズボンの後ろポケットにしまいこんだ。

男は喫茶店を出ると、電車で二駅移動した。土地勘のあるビルの裏手に回ると、裏口から中に入って行った。非常階段から4階に上がって奥の扉に向かう。

白いプレートに山田金融の文字が書いてある。
男は白い手袋をすると、扉をノックした。中からは反応はなかった。

男はポケットから工具を取り出すと数秒で扉を開けた。すぐに目的の古いダイヤル式の金庫に向かった。

30分後、男は喫茶店の二階に座ってタバコをふかしていた。黒いジャンパーの下に札束の詰まった黒いバックが置かれたいた。