さて、そうはいってもブラック企業だって狡猾だ。説明会では綺麗な言葉ばかりを並べ、壇上の社員からも笑顔が溢れている。

そして学生は純粋だ。社会人という生き物に不安はあれど、どこか憧れている側面も否めない。

だが、このギャップを埋められず、さらに僕のように運が悪い方は、黒色に黒色を上塗りした会社に入社するリスクが高まる。

そういえば埼玉営業所に配属される前、本社で二週間ほどの研修を受けたのだが、「早く研修が終わる分、周りよりも早く成長できるはずだ」と本気で考えていた愚かな自分が存在した。

今なら分かる。
ただの「人材不足」だ!!
もっと四字熟語を学んでおけば…。

研修では業界特有の毛髪知識を叩きこまれた。教え方は体育会系というわけではなく、スケジュール通り定時に退勤することもできた。

ただし僕たち新入社員が退勤する際、弊社の営業マンが誰一人として帰社していない状況には疑問を覚えた。

「きっと直帰してるんだよ」
「そうだよな。ウチの会社は営業車通勤ありな会社だし」
「俺もそう思う」
「とりあえず飲み行こうぜ」

そんな同期社員との談笑が懐かしい。

ちなみに研修期間だが、東横インのツインルームで缶詰だった。シングルが良かった。



埼玉営業所への配属は入社前から事前に知らされていた。職種は営業。というより弊社の従業員の内、90%以上は営業職で占められており、そのほとんどが男性社員である。

つまり職場での出会いなんてあり得ないわけで、ここもブラック企業の条件として個人的にはカウントしたい。従業員数は会社全体で100人程だったと思う(名誉棄損上、ね)。

働く従業員の平均年齢は、おそらく20代後半で落ち着くだろう。これは弊社の離職率の高さを間接的に証明しているわけだが、なぜか就職サイト上では「若手が働きやすい会社」と謳われ、まるで「企業の強み」のように表現されているから不思議である。

僕が配属された埼玉営業所も、若手社員ばかりで構成されていた。埼玉営業所では僕を含めて8人の従業員が働いていたが、この内7人は20代だったのである。


さて、ここで少し愚痴らせていただこう。
弊社の最も残念な特徴として、超・長時間労働を強制させられるにも関わらず、残業代が全く出ないこと。つまりサービス残業というボランティア活動を強要されることが挙げられる。

昨今は「過労死ライン」という言葉をよく耳にするが、あの基準が正確だとしたら、僕は在職していた12カ月間、常に死と隣り合わせだったことになる。
手取り16万弱で命を賭けるなんて、はは、酔狂すぎる。

上司からのパワハラも酷かった。死ね、キモイ、童貞、包茎ーーー言葉の暴力に加え、身体的暴力も加わって…。

ああ、ダメだダメだ。
怨嗟の念で心が支配され、不幸自慢の書籍になりつつあるじゃないか。この続きは本書の中で小出しに伝えることにしよう。


*続く