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Music and others

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Duets - Ghost On The Canvas

 この2月にアップした本アルバム発売前の情報を元にしたブログの続編になります。 随分と間が空いてしまいましたが、マイペースで更新して行きます。

 

 

アルバム・タイトルは『Duets - Ghost On The Canvas Sessions』とされ、4月19日にリリースされました。 オリジナル音源より、故グレン・キャンベルのヴォーカルを抜き出し、音楽界の偉大なアイコン達、ブライアン・ウィルソン(Brian Wilson)、キャロル・キング(Carol King)、ドリー・パートン(Dolly Parton)、エルトン・ジョン(Elton John)、スティング(Sting)、エリック・クラプトン(Eric Clapton)、などが参加したデュエット・アルバムとなっています。 

 

全曲を聴いて感じたのは、あのビートルズ(The Beatles)の最後の新曲、“Now and Then”を聴いた時の複雑な想いと同じ感情でした。 デミックス(demix)と呼ばれるAIテクノロジーを駆使した革新的なテクノロジーにより、過去の音源から必要となる特定のソース、今回の企画ではグレン・キャンベル(Gren Campbell)のヴォーカル、を抽出して再構築する。

素晴らしい試みだと思うのですが、一方では、余りにも音を磨き上げ過ぎて(polish)しまって、リアリティーが無くなっているように感じました。 もっと、オーガニックなサウンドで良かったのでは??と、余りにも美化し過ぎているように…。

 

 カントリー・ミュージック界の伝説的な歌手、兼ギタリストのグレン・キャンベル(Gren Campbell)は、 60年以上に亘り5,000 万枚以上のレコードの売り上げを誇るレジェンドと言えます。

”ラインストーン・カウボーイ”(Rhinestone Cowboy)、”ウィチタ・ラインマン”(Wichita Lineman)、”サザン・ナイツ”(Southern Nights)などのヒット曲を発表してきました。 一方で、歌手だけでなく、映画スター、テレビのパーソナリティとして、アメリカのポップ・カルチャーに消えることのない足跡を残しました。  

 

更には、凄腕のスタジオ・ミュージシャン集団、ザ・レッキング・クルー(the Wrecking Crew)の革新的なギタリストとして、エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)、フランク・シナトラ( Frank Sinatra)、ザ・ビーチ・ボーイズ(the Beach Boys)、リッキー・ネルソン(Ricky Nelson)、ナット・キング・コール(Nat King Cole)、ザ・モンキーズ(the Monkees)、フィル・スペクター(Phil Spector)、ザ・エヴァリー・ブラザーズ(The Everly Brothers)など、その他多くのミュージシャンのレコーディングで活躍してきました。

 

 

■『Duets - Ghost On The Canvas Sessions』

  All songs co-written by Glen Campbell and Julian Raymond, except where noted

1. Intro    0:51

2..”There’s No Me… Without You” < with Carole King >    6:16

2.”Ghost On The Canvas” < with Sting >      (Paul Westerberg) – 4:13

4.”Hold On Hope” < with Eric Church >      (Robert Pollard) – 3:33

5.”The Long Walk Home” < with Hope Sandoval >    2:20

6.”Nothing But The Whole Wide World” < with Eric Clapton >     (Jakob Dylan) – 3:41

7.”In My Arms” < with Brian Setzer >      (Teddy Thompson) – 3:27

8.”A Better Place” < with Dolly Parton >    1:51

9.”Strong” < with Brian Wilson >   3:33

10.”A Thousand Lifetimes” < with Linda Perry >     (Campbell, Justin Grey, and Raymond) – 4:09

11.”It’s Your Amazing Grace” < with Daryl Hall and Dave Stewart >  3:14

12.”Any Trouble” < with X >      (Westerberg)  – 3:00

13.”I’m Not Gonna Miss You” < with Elton John >    2:58

 

produced by Dave Kaplan and Julian Raymond



全12曲ですが、オリジナル・アルバム収録の16曲を全て再レコーディングしている訳ではありません。 10曲がピックアップされて、再構築されていますが、2曲はドキュメンタリー映画の『Glen Campbell: I'll Be Me (Original Motion Picture Soundtrack)』のサウンド・トラックから選曲されています。 グレン・キャンベルのヴォーカルを抽出して、バックのサウンドとゲスト陣のヴォーカルと演奏をミックスしています。 グレン自体のヴォーカルもかなりマッシュ・アップされていて、ゲスト陣のヴォーカルとインストルメントを含めて全く違うサウンドになっていると思います。 もう少しレベルを下げて、オーガニックな感じでも良かったのではないかと思わなくもないです・・・・・。

と、ケチを付けたくなるのですが、一度聴けば、もうそんな事はどうでもよくなるくらいに素晴らしい全12曲を噛みしめて聴きましょう!

 

そして、一つだけ不可解なことは、ロジャー・マニング・ジュニア(Roger Manning, Jr.)の曲が除かれていることですね。彼が提供していた6曲中、“Any Trouble“を除く5曲はすべて外されており、何が問題となったのかは謎です。

 

さて、本アルバムの最初に登場するのは、1分足らずのインストですが、これを聴けばお分かりでしょう・・・・ブライン・ウィルソン(Brian Wilson)のお家芸とも言える美しい多重コーラスでスタートするのです! 鳥肌ものです。

□ “Intro”

 

 

 

 

キャロル・キング(Carole King)ですが、もう二人のヴォーカルが完璧に組み合わされています。 古い友人同士が再会を喜んでいるように聴こえます。晩年のグレン・キャンベル本人の想いがそのまま綴られている歌詞ですね。

 

Glen-Carole

□ “There’s No Me… Without You”   by Glen Campbell  with Carole King;

 

 

続くのは、アルバム・タイトル曲ですが、スティング(Sting)が登場します。 スティンのヤスリを掛けたようなくすんだヴォーカルが深みを与えています。 比喩的な表現である「Ghost on the canvas」、良いワードですね。

□ “Ghost On The Canvas ”   by Glen Campbell  with Sting;

 

 

 

歌詞の中にあるワード、”the cowboy”とか”the last thing”が印象的で、タイトルの「希望を持ち続けてください。」とは正に・・・・。

□ “Hold On Hope ”   by Glen Campbell  with Eric Church;

 

 

 

 

さて、次の曲は最初にゲストが歌い出すという数少ないパターンの曲です。 ホープ・サンドヴァル(Hope Sandoval)の声には歌うことへの惜しみのない愛が感じられて良いですね。

 

そして、私にとっては意外なエリック・クラプトン(Eric Clapton)の登場です(再掲します)。 

 

□ “Nothing But The Whole Wide World ”   by Glen Campbell  with Eric Clapton;

 

 

 

そして、オリジナルにも客演していたブライアン・セッツァー(Brian Setzer)による再演ですね。 オリジナルでは、ディック・デイル(Dick Dale)に遠慮していたように感じましたが、ここでは本領発揮というところでしょうか?

□ “In My Arms ”   by Glen Campbell  with Brian Setzer;

 

 

 

 

そして、8曲目は唯一無二の存在、正に”歌姫”と呼べるドリー・パートン(Dolly Parton)の登場です。 短すぎる曲ですが、彼女の歌声で心が溶けてしまいそうでした。 天使と言うのは失礼かもしれませんが、この楽曲の歌詞に寄り添うような声に涙が出てきました(ホントです!) ベスト・トラックと言いたいところですが、次の曲があるので次点です(笑)。

□ “A Better Place”   by Glen Campbell  with Dolly Parton;

 

 

 

”Intro”に続くハーモニーの美しい曲、”Strong”は、正にブライアン・ウィルソン(Brian Wilson)がグレン・キャンベルに提供した1965年リリースの”Guess I’m Dumb”に繋がるアレンジだと言えます。 現在、そのブライアン自身がアルツハイマー病に罹患しており、全く動向が報じられなくなり、この曲を聴くと色々なことが頭をよぎります。 

 

もちろん、この曲のサウンドを構築したのは、ブライアン本人と言うよりは、ダリアン・サハナジャ(Darian Sahanaja)を中心としたメンバー、ポール・フォン・メルテンス(Paul Von Mertens)、プロビン・グレゴリー(Probyn Gregory)、ジム・ラスペサ(Jim Laspesa)、デリック・アンダーソン(Derrick Anderson)、ケイトリン・ウルフバーグ(Kaitlin Wolfberg)による共同作業です。

パーカッション、ホーン、ヴォーカル、全てが完璧な仕上がりだと思います!

 

□ “Strong”   by Glen Campbell  with Brian Wilson;

 

 

□ “Guess I’m Dumb”   by Glen Campbell  with Brian Wilson;

 

 

 

そして、人生そのものを表現したかのような歌詞が印象的な””は、リンダ・ペリー(Linda Perry)とのデュエットになっています。

 

そして、もうデュオとしてのホール&オーツ(Hall & Oates)は永遠に見ることが出来なくなったダリル・ホール(Daryl Hall )がデイヴ・スチュワート(Dave Stewart)とのコラボで登場します。 ブリッジがアレンジされて、より美しい仕上がりになっていると思います。 そして、やはりダリル・ホールのハーモニー・ヴォーカルは良いです。

□ “It’s Your Amazing Grace”   by Glen Campbell  with Daryl Hall and Dave Stewart;

 

 

 

 

そして、一番の謎であった”Any Trouble” < with X > のが誰なのか、超大物のアーティストかと勝手に想像していたら、どうやら肩透かしのようでした。 現在も活動を継続していたとは思いもよらなかった、パンク&ニューウェイヴ・バンドのあの「X」でした! 77年結成ですから驚きですし、グレン・キャンベルとの関連性が全く分からないです。

 

こう言ったアルバムを締めくくるのに、これ以上ふさわしい人が他にいるでしょうか? エルトン・ジョン(Elton John)の登場です。

この楽曲は、アルバム『Ghost on the Canvas』には収録されていませんが、グレン・キャンベルの正真正銘の最後のレコーディングになりました。 2013年1月の事です。 翌年公開されたドキュメンタリー映画、『Glen Campbell: I'll Be Me』のサウンド・トラックとしてリリースされました。 歌詞は愛する人たちへの惜別のメッセージになっています。

 

     I'm still here, but yet I'm gone

     I don't play guitar or sing my songs

     They never defined who I am

     The man that loves you 'til the end

     You're the last person I will love

     You're the last face I will recall

     And best of all, I'm not gonna miss you

     Not gonna miss you

 

 

□ “I’m Not Gonna Miss You”   by Glen Campbell  with Elton John;

 

 

 

誰でも、いつかは訪れる”別れ”をどう表すのか、『終活』ではないですが考えさせられます。 誰しも年齢を避けることはできません。

 

      For me personally, there’s no getting around age.

 

 

2月にこのアルバムのリリースを知り、書いたブログからあっという間に5カ月も経ってしまいました。最近は時間が過ぎるのが早く感じられます。

 

    2024年2月  『Duets - Ghost On The Canvas Sessions』  (こちらです↓↑