Eric Clapton: 50th Anniversary Deluxe Edition | Music and others

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年明け、このブログで再スタートを切るはずが、もう2月になってしまいましたね、年を重ねると「光陰矢の如し・・・」ですね(溜息)。
 
数か月に亘り書き散らかしたまま放置していた断片を整理しての第1弾は、やはり、エリック・クラプトンEric Clapton)の発売50周年記念盤になりました。 
 
非常にヴォリューミーな4枚組ですから、簡潔にまとめるのは非常に難しいです・・・・・・・??
 
私が最も敬愛するアーティストである、エリック・クラプトン(Eric Clapton)が1970年8月に発売した初のソロ・アルバム、『Eric Clapton(邦題;エリック・クラプトン・ソロ)』の50周年記念デラックス・エディションが昨年2021年8月20日にリリースされました。 このデラックス・エディションの収録内容の目玉は、アルバム収録全12曲の”エリック・クラプトン・ミックス”が正式にリリースされる点にあります。 
 
もちろん、遡ること1年ほど前の2020年6月25日にコレクターズ向けの通販等で、独自に入手された米アトコ初回原盤マスターを元に『 Eric Clapton : The Unreleased Eric Clapton Mix』として販売されています。 価格は2500円と極めて良心的な?値段でしたので、もちろん購入しましたが、オフィシャル・リリースはまた別物だと思います。
 
今回は完全生産限定盤で、国内盤ではSHM-CD4枚組で8800円(豪華なブックレット付き)しますが、2000円ほど安い輸入盤を購入しました、もう墓場まで持っていくつもりで買っています。
 
CD 1: The Tom Dowd Mix - The UK Version
CD 2: The Eric Clapton Mix
CD 3: The Delaney Bramlett Mix
CD 4: Singles, Alternate Versions & Session Outtakes
 
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私自身は、このアルバムそのものをアナログ時代を含めて何度となく購入しましたが、真剣に聴きこんだことはありません。 このアルバムのリリース後、わずかに3か月後の70年11月にリリースされたデレク&ザ・ドミノスDerek and the Dominos)の『Layla and Other Assorted Love Songs』(邦題;『いとしのレイラ』)を際立たせる陰の存在でしかないからでした。 収録された楽曲のバラツキと、あまりにも多くのミュージシャンが参加したことに伴う散漫なサウンドが対照的に聴こえるのです。 「ブリティッシュ・ロック+スワン・プロック」が完全にクロスオーヴァ―するまでには至っていない気がします。
 
全米チャートでは13位を記録し、30週連続でランク・インしたことからある一定の成果は挙げたと見られていますが、エリック・クラプトンのファンの評価はそれほどでもありませんでした、私も同様です。

 

アメリカ南部のサウンド、特に、当時英国のミュージシャンに衝撃を与えたザ・バンド、エリックはクリーム在籍当時にアメリカ国内において、ボブ・ディラン&ザ・バンド(Bob Dylan & The Band)による『The Basement Tapes』のブートレグ(おそらくは、『Great White Wonder』)を入手して彼らのサウンドに魅せられていました。 その後、1968年7月にリリースされたデヴュー・アルバム『Music from Big Pink』で繰り拡げられたダウン・トゥ・アース(down-to earth)なサウンドに憧れを持ち、バンドとしてのアンサンブルを重視する方向に向かっていたエリックにとって、このアルバムでヴォーカリストとしての鍛錬を積んだのだと言えます。 
 
デラニー&ボニー(Delaney & Bonnie)に関しては、ロスアンゼルスに赴き実際にライヴ・ステージを目の当たりにしたジョージ・ハリソン(George Harrison)経由でテープを入手して聴いていたと言われています。 それが縁で、短命で終わったブラインド・フェイス(Blind Faith)の全米ツアーのオープニング・アクトとしてデラニー&ボニー&フレンズ(Delaney & Bonnie & Friends)を招聘したのです。
 
このソロ・アルバムの発端は、デラニー&ボニー&フレンズをヨーロッパに紹介するために組まれた69年10月からのライヴ・ツアーに同行しセッションを重ねたことに因ります。 ドイツを皮切りに、イギリス、デンマーク、スカンジナビア、そして、いくつかライヴにはジョージ・ハリソンも匿名で客演していました。 フレンズ・ツアー終了後の11月からこのソロ・アルバムのレコーディングがスタートしました。
デラニー・ブラムレット(Delaney Bramlett)が前面に出て、プロデュース、アレンジ、楽曲の共作と大きな役割を担いますが、そこには彼なりの”野心”があったことは間違いありません。
 
このアルバム以降は、二人の間にあった親密な関係、友情は急速に冷めて行ったのです。 最初にデラニーがヴォーカルを録り、それをガイド・ヴォーカルとして、エリックがカラオケ形式の様にしてリード・ヴォーカルをレコーディングして、テープを送り返す作業が続いて行きました。 今であれば、MIDIファイルとして瞬時にデータ転送できますが、当時は気長に時間を費やさざるを得ない作業だったと思います。レコード・レーベル側で考えていたリリースのタイム・ラインに間に合わないと判断された結果として、3種類の異なるミックスが存在することになってしまったのです。 
 
希少性だけから言えば、後にも先にもエリックが自身のレコーディングのミキシングを行ったのは、このアルバムしかないのです、ただそれだけのことです! しかしながら、半分素人でもあるエリック御大にミキシングを指示したレコード・レーベル側、その出来具合を聴いて慌ててトム・ダウド(Tom Dowd)に依頼するとはひどい話ですね!
但し、「完成手前の途中の状態では??」と言えるようなミックスがあるので、仕方ないかもしれません・・・・。
 
このアルバムに対して、デラニーが考えていた仮タイトルは『Eric Clapton Sings』でしたが、レコードレーベル側から却下されてしまい、シンプルに『Eric Clapton 』となった経緯もあります。 
 
 
それにしても、デラニー&ボニーには成功する可能性は十分あったのですが、策士であるデニー・コーデル(Denny Cordell)とリオン・ラッセル(Leon Russell)により、フレンズを丸ごと乗っ取られてジョー・コッカー(Joe Cocker)のバック・バンド(いわゆる、『Mad Dogs & Englishmen』の大成功に繋がります!)に鞍替えさせられてしまい、失意のままアメリカに帰国してしまいます。 やがて、数枚のアルバムを残して解散してしまい、これ以降は、表舞台に立つような活躍はありませんでした。
 
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◇ Tracks;
CD1  (The Tom Dowd Mix - The UK Version) all mixes released on CD and vinyl
1. Slunky     (Delaney Bramlett · Eric Clapton)     3.40
2. Bad Boy      (Delaney Bramlett · Eric Clapton)     3.59
3. Lonesome And A Long Way From Home      (Delaney Bramlett · Leon Russell)     3.50
4. After Midnight     (J. J. Cale)      3.14
5. Easy Now      (Eric Clapton)     3.03
6. Blues Power     (Eric Clapton· Leon Russell      3.15
7. Bottle Of Red Wine      (Eric Clapton)     3.12
8. Lovin' You Lovin' Me      (Delaney Bramlett · Eric Clapton)     3.39
9. I've Told You For The Last Time      (Delaney Bramlett · Steve Cropper)     2.36
10. I Don't Know Why      (Delaney Bramlett · Eric Clapton)     3.23
11. Let It Rain      (Delaney Bramlett · Eric Clapton)     5.06
 
CD2  (The Eric Clapton Mix)
1. Slunky      3.34 <unreleased mix>
2. Bad Boy      4.20  <unreleased mix>
3. Lonesome And A Long Way From Home      3.58 <unreleased mix>
4. After Midnight      3.19  <released on Life in 12 Bars Soundtrack>
5. Easy Now      2.57  <released – this was the only EC mix inserted into the original 1970 Tom Dowd mix LP>
6. Blues Power      3.53  <unreleased mix>
7. Bottle Of Red Wine      2.58  <unreleased mix>
8. Lovin' You Lovin' Me      3.44  <unreleased mix>
9. I've Told You For The Last Time      2.32  <unreleased mix>
10. I Don't Know Why      3.35  <unreleased mix>
11. Let It Rain      5.18  <released on Life in 12 Bars Soundtrack>
 
CD3  (The Delaney Bramlett Mix) all mixes released on 2005 Deluxe Edition CD
1. Slunky      3.35
2. Bad Boy      3.44
3. Easy Now      3.00
4. After Midnight      3.19
5. Blues Power      3.20
6. Bottle Of Red Wine      3.09
7. Lovin' You Lovin' Me      4.07
8. Lonesome And A Long Way From Home      3.52
9. I Don't Know Why      3.45
10. Let It Rain      5.02
 
CD4  (Singles, Alternate Versions & Session Outtakes) all titles released on 2005 Deluxe Edition CD except COMIN’ HOME (Alternate Mix) which is a previously unreleased mix
1. Teasin'      2.17  - Performed by King Curtis with Delaney Bramlett, Eric Clapton & Friends
2. Comin' Home (Alternate Mix)      3.44  - Performed by Delaney & Bonnie & Friends featuring Eric Clapton unreleased mix
3. Blues In "A" (Session Outtake)      10.28
4. She Rides (Let It Rain alternate version)      5.08
5. I've Told You For The Last Time (Olympic Studios version)      6.49
6. I Don't Know Why (Olympic Studios version)      5.14
7. Comin' Home (single A-side)      3.15  - Performed by Delaney & Bonnie & Friends featuring Eric Clapton
8. Groupie (Superstar) (single B-side)      2.50  - Performed by Delaney & Bonnie & Friends featuring Eric Clapton
 
Personnel;
  Produced and Arranged by Delaney Bramlettby: 
  
  Eric Clapton – lead guitar, lead vocals
  Delaney Bramlett – rhythm guitar, backing vocals
  Stephen Stills – guitar, bass (Let It Rain), backing vocals
  Leon Russell, John Simon – piano
  Bobby Whitlock – organ, backing vocals
  Carl Radle – bass guitar
  Jim Gordon – drums
  Jim Price – trumpet
  Bobby Keys – saxophone
  Tex Johnson – percussion
  Bonnie Bramlett – backing vocals
  Rita Coolidge – backing vocals
  Sonny Curtis – backing vocals
  Jerry Allison – backing vocals
 
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このアルバムのレコーディングによって、エリックは”ギターを弾く”だけのプレーヤーから、大きく変わって行く”道標“を得たはずです。 愛用するギターも、“Gibson & Marshall” からFender Stratocaster & Fender Oldchamp の組み合わせに変えて、セレクターのフェイズ・アウトから生み出される独特なアタックの強い、やや歪んだ絶妙な”ハーフトーン”を創り出したのです!
 
 
彼の喉は弱くてアタックの強いソウルフルな”声”を出すことが出来ませんが、逆にそれが個性として、切ないヴォーカル・スタイルに辿り着いたのです、結果論ですけれど…。 ベイビーフェイス(Babyface)によるプロデュースで大ヒットした”Change the world”を聴けば、納得できますね。
 
 
3種類のミックスを比較してその相違点を併記する事にあまり意義を感じないので、それは同好の諸氏にお任せします(笑)。
結論から言わせてもらえば、やはりプロフェッショナルであるトム・ダウドによる既発のミックスに優るものはないと思いました。 コレクターズ・アイテムとしての価値だけだと言えます!?
 
 
エリック・クラプトン・ミックスでは、3曲ほどギターソロやオブリガートが明らかに別テイクになっています。1曲目の“Slunky”、続く“Bad boy”、そして、”Blues Power”になります。 また、ヴォーカルへのエコーがより深くなっており、ヴォーカルに対する”自信のなさの裏返し”がそうさせたのだと思われます。
 
出だしの”Slunkyは、驚きのファンキーなインスト・ナンバーで、デラニーとエリックとの共作です。 この原型は、ボーナス・ディスクとも言えるアウトテイク集のCD4に収録されている”Teasin’”、デラニーとあのキング・カーティス(King Curtis/Curtis Ousley)が共作した楽曲であり、このレコーディングの合間に同じスタジオで演奏されています。 私にとっては、コーネル・デュプリー(Cornell Dupree)のソロ・アルバム、『Teasin’ 』のタイトル・トラックの方が強く印象に残っていますが・・・・。 やはり、16分音符の解釈の違いが良く分かる内容だと思います。
 
□ Slunky” by Eric Clapton & Friends

 

 

 
□ Teasin’” by King Curtis with Delaney Bramlett, Eric Clapton & Friends

 

 

 
 
続く“Bad boy”も、オブリガートは全くの別テイクですし、ヴォーカルのエコーが最も深いです。
 
そして,今やお馴染みとなったJ・J・ケール(J. J. Cale)の66年リリースの“ After Midnight"の初カヴァーです。 デラニー・ブラムレット経由で知った訳ですが、この出会いがあればこそ現在に至る訳です。このアルバムからのシングル・カット曲、第1弾でスマッシュヒットしました。レオン・ラッセル(Leon Russell)のピアノは一味違う跳ね方をしていますし、ジム・ゴードン(Jim Gordon)のドラミング、特にライド・シンバルの使い方、は素晴らしいですね!
 
□ After Midnight” by Eric Clapton & Friends

 

 

 
Blues Power”は、ドミノスのライヴ・アルバムでの演奏と比べると少しR&B寄りと言うか、ソウル・フレイヴァーに満ちています。レオン・ラッセルとの共作ですが、タイトルにある様なブルーズではなく、ロックンロールです。
続く“Bottle Of Red Wine”は、私にとってはアマチュアバンド時代のシャッフルビートの課題曲でしたが、ここではよりポップな仕上がりです。
 
この後に続く3曲は、デラニーが考えていた仮タイトル、『Eric Clapton Sings』通りの内容ですね、シンガーとしてのクラプトンの登場です! 中でも、演歌みたいなソウル・チューンの”I Don't Know Why”は、エリックらしい手癖のペンタトニック・スケールのフレーズ満載です!
 
そして、このアルバムの中では最も印象的で楽曲の良さが光る”Let It Rainです。 エリック・クラプトン・ミックスでは、スタートする直前のアコースティック・ギターのカッティングとカウント、おそらくゲスト参加したスティーヴン・スティルス(Stephen Stills、が収められています。
 
□ Let It Rain” by Eric Clapton & Friends

 

 

 
なお、アウトテイク集のCD4には、”She Rides (Let It Rain alternate version)”と言う歌メロが全く違う原曲ともいえるトラックが収録されています。 全く違う曲に聴こえるのが面白いですね・・・・・。
□ She Rides (Let It Rain alternate version)” by Eric Clapton & Friends

 

 

 
また、アウトテイク集には以前ブログで取り上げたことのある”Superstar”(原題;”Groupie”)が収録されています。 当時のロックには付き物であったドラッグ、アルコール、そして、グルーピーを題材にした楽曲ですが、これを後にカーペンターズ(the Carpenters)がカヴァーして全米第2位の大ヒットとなります。 ロック・ギタリストへの恋心を募らせるグルーピーのことを歌った切ない楽曲で、いい歌メロが多くのカヴァーを生むことに繋がったのだと思います。
 
 
□ Groupie (Superstar)” by Delaney & Bonnie & Friends

 

 

    2016年3月 “Groupie ”から、”Superstar”へ (ブログはここ↓↑
 
 
 
結果的にはアルバム自体は過渡的な内容であり、大きな評価を得ることはありませんでした。 それから6年の時を経て、ザ・バンド(The Band)を中心に多数のアーティストをバックに迎えてレコーディングされた、あの『No Reason to Cry』で溜飲を下げたのではないかと私自身は勝手に思っています。