Rod Stewart: 1975-1978 | Music and others

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1968年に加入したジェフ・ベック・グループ(Jeff Beck Group)を皮切りに、ザ・フェイセズ(The Faces)を結成し、希代のロックヴォーカリストとして脚光を浴び、ソロ活動を並行してスタートさせ、その後、押しも押されぬスーパースターにまで上り詰めたサー・ロッド・スチュワートSir Roderick David Stewart)の登場です。 2016年に英国政府によりナイト爵位(Knight Bachelor in the 2016 Birthday Honours)が授与されたのですから、もうSexyなどとは声高には言えないはずですけれど・・・・・。
 
そのロッド・スチュワートの全盛期とも言える、1975年から78年までのアルバム4枚をまとめたアナログLP5枚組がライノ・レコーズ(Rhino Records)より6月4日に発売されました。 どの時期をもって”全盛期”と言うのか異論はあると思いますが、個人的には、イギリスでの重税から逃れるためにアメリカ西海岸に移住して、トム・ダウド(Tom Dowd)をプロデューサーに迎えて制作した75年リリースのAtlantic Crossing』で一気に花開いたと思います。 もちろん、彼の原点とも言える、マーキュリー時代の71年リリースの『Every Picture Tells a Story』もとても素晴らしい内容ですが・・・・、バッキングのミュージシャンの演奏面に疑問符が残るのです。
 
 
Atlantic-Crossing
 
 
これ以降は、毎年1枚のペースで『A Night On The Town』、『Foot Loose & Fancy Free』、『Blondes Have More Fun』とヒット・アルバムをリリースしています。 当時の時流に完全に媚びて、ディスコ・ミュージックにシフトした『Blondes Have More Fun』を認めるのかどうかは微妙ですけど(私個人はこのLPはパスして購入しませんでした、余りにも見え過ぎていたので!)。
 
Foot-Loose-Fancy-Free
 
 
一方では、派手な私生活と女性スキャンダルに、物議を醸す歌詞などで批判の矢面にさらされるなど、スーパースターとなったことによる弊害も見え隠れし、80年代以降は徐々に失速して行きました。 94年にはソロ・アーティストとしてロックの殿堂入り(the US Rock and Roll Hall of Fame)を果たしました。 2012年には、ザ・フェイセズの一員としてもロックの殿堂入りを果たしています。
 
しかしながら、90年代になると、キャリア前半で見られたような代表作となるような楽曲を産み出すことが出来ず、酷い評価に嫌気もさしてしまい、楽曲の創作を止めてしまいます。この後ほぼ20年間に亘り、作曲することを封印し自作曲の発表を中断してしまいます。
 
転機となるのは、2000年に甲状腺癌が見つかり、手術を受けたことにより高音でシャウトすることが出来なくなってしまい、歌唱法を変え新境地の開拓を図ることになります。 賛否両論大いにある!、例のスタンダートナンバーをカヴァーした”グレート・アメリカン・ソングブック”(The Great American Songbook)の連作の大成功で初のグラミー賞を獲得し、劇的な復活を果たしました。 3部作の予定がこの成功のお陰で5作品にまで拡大して制作しています。 私的には全く聴く気にもならず、未だにストリーミングでもスルーしています。
 
ここ10年ほどはイギリスに軸足を移して活動しており、アメリカでの大規模なプロモーションやライヴは行わなくなりました。2013年リリースのアルバム、『Time』以降は、続く『Another Country』、最新作になる『Blood Red Roses』、全て英国チャート1位に輝いています。 収録曲の大半が共作によるオリジナル曲となり、フィドルやマンドリンがバックで鳴っている原点回帰の様なトラッド、ブリティッシュ・フォークの香りがしています。 ただ、ヴォーカルはハスキーなままですがシャウトするまでには至らず、かなり軽い感じに聴こえてしまいます。
 
上に挙げた全盛期とも言える70年代のアルバムのリマスター盤の制作がライノ・レコーズで始まり、CD2枚組(1枚がオリジナルのリマスター、2枚目がアウトテイクやデモ・テイクと言う構成)での発売が続くのかと期待しておりました。
しかしながら、セールス面で芳しくなかったのか、あるいは、許諾関係で大きな障害があったのか、Atlantic Crossing』とA Night On The Town』の2作品で中断してしまいました。
 
今回発売されたアナログ5枚組では、その5枚目が『Encores 1975-1978』と言うタイトルで全10曲のアウトテイク&デモテイクが収録されています。 アナログB面の5曲は完全なる未発表曲となっており、リリースが頓挫したと思われる『Foot Loose & Fancy Free』、『Blondes Have More Fun』のリマスター盤に収録予定であったアウトテイクが5曲初出となっています。
 
Rod Stewart 1975-1978 Tracklist;
◆ Atlantic Crossing (1975)
Fast Side
 1. "Three Time Loser"
 2. "Alright For An Hour"
 3. "All In The Name Of Rock' N' Roll"
 4. "Drift Away"
 5. "Stone Cold Sober"
Slow Side
 1. "I Don't Want To Talk About It"
 2. "It's Not The Spotlight"
 3. "This Old Heart Of Mine"
 4. "Still Love You"
 5. "Sailing"
 
Night-on-the-town
 
◇ A Night on the Town (1976)
Slow Side
 1. "Tonight’s The Night (Gonna Be Alright)”
 2. “The First Cut Is The Deepest”
 3. “Fool For You”
 4. “The Killing Of Georgie (Part I And II)”
Fast Side
 1. “The Balltrap”
 2. “Pretty Flamingo”
 3. “Big Bayou”
 4. “The Wild Side Of Life”
 5. “Trade Winds”
■ Footloose & Fancy Free (1977)
Side One
 1. “Hot Legs”
 2. “You’re Insane”
 3. “You’re In My Heart (The Final Acclaim)”
 4. “Born Loose”
Side Two
 1. “You Keep Me Hangin’ On”
 2. “(If Loving You Is Wrong) I Don’t Want To Be Right”
 3. “You Got A Nerve”
 4. “I Was Only Joking”
□ Blondes Have More Fun (1978)
Side One
 1. “Da Ya Think I’m Sexy?”
 2. “Dirty Weekend”
 3. “Ain’t Love A Bitch”
 4. “The Best Days Of My Life”
 5. “Is That The Thanks I Get?”
Side One Continued
 1. “Attractive Female Wanted”
 2. “Blondes (Have More Fun)”
 3. “Last Summer”
 4. “Standin’ In The Shadows Of Love”
 5. “Scarred and Scared”
 
Blondes-have-fun
 
☆ Encores 1975-1978
Side One
 1. “Holy Cow” – with Booker T. & The MG’s
 2. “To Love Somebody” – with Booker T. & The MG’s
 3. “Return To Sender” – with Booker T. & The MG’s
 4. “Rosie” – Early Version
 5. “Get Back” – Alternate Version
Side Two
 1. “You Really Got A Hold On Me” *
 2. “Honey, Let Me Be Your Man” *
 3. “Lost Love” *
 4. “Silver Tongue” *
 5. “Don’t Hang Up” *
  * previously unreleased
 
既発の4枚のアルバムについては今更コメントする必要はないと思います。 私にとっては、A面とB面ではなくて、”Fast Side”と”Slow Side”となっているAtlantic Crossing』とA Night On The Town』は良く聴きましたね、特に”Slow Side”はベーシストにとってはお手本の様なフレージングがてんこ盛りで、耳コピーして真似していました。 中でも、リー・スクラー(Leland Sklar)の歌伴でのプレイは鳥肌ものです。 それと、実際にアマチュア・バンドで取り上げたドビー・グレイ(Dobie Gray)によりヒットした”Drift Away”(邦題は確か”明日なきさすらい”でした)は、このロッド・スチュワートのアレンジ、レゲエ・ヴァージョンでした。
 
そして、忘れてはならない、今は亡きダニー・ウィッテン( Danny Whitten)作の”I Don't Want To Talk About It”がこれほどまでに良い曲であったことを再認識させてくれたことには感謝しないといけません。
□ ”I Don't Want To Talk About It” by Rod Stewart

 

 

 
 
 
さて、『Encores 1975-1978』の収録曲について感想を少し述べてみます。 最初の3曲はAtlantic Crossing』の時のアウト・テイクで、バッキングはブッカー・T&MGsと言う豪華なものです。 
 
アラン・トゥーサン(Allen Toussaint)作でリー・ドーシー(Lee Dorsey )が取り上げてヒットした”Holy Cow”、次がビージーズの”To Love Somebody”です。 
 
□ ”Holy Cow” by Rod Stewart with Booker T. & The MG’s

 

 

 
 
特に、同じ年の9月に妻による銃撃で不慮の死を遂げたアル・ジャクソン(Al Jackson, Jr.)のドラムス、シンプルながらもしなやかなハイハット・ワークやスネア使い、痺れるくらいに美しいですね。 そして、ビージーズ(The Bee Gees)の67年リリースのソウルフルなTo Love Somebody”です。 元々は、この曲はオーティス・レディング(Otis Redding)の為に書き下ろされたのですが、不慮の飛行機事故で亡くなったために、ビージーズがレコーディングしたと言ういわく付きの曲です。
 
□ ” To Love Somebody” by Rod Stewart with Booker T. & The MG’s

 

 

 
 
そして、極めつけの”Return To Sender”、エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)が自身が主演した映画、62年の「Girls! Girls! Girls!」での挿入歌であり、大ヒットしました。 邦題は”心の届かぬラヴ・レター”ですね。 この3曲はとてもいい出来であり、正式にリリースする機会さえあれば陽の目を見るべき内容だと思います。
□ ”Return To Sender” by Rod Stewart with Booker T. & The MG’s

 

 

 
オリジナルのアルバムには未収録であった、シングルB面曲の”Rosie”(第2弾シングルであった”The Killing of Georgie (Part I and II)”)の初期ヴァージョンが続きます。 マンドリンがバックで鳴り響ているアコースティックな曲で、”Girl from the North Country”や”Mine for Me”の流れを汲む楽曲です。 でも、本音を言えば、”Tonight's the Night”(Early Version)とかを収録すべきではないかと思います。
 
 
Get Back”は、ミュージカル・ドキュメンタリー映画の『All This and World War II』(邦題;「ザ・ビートルズと第二次世界大戦」)での挿入歌でした。特にどうと言った内容ではありません。
 
 
そして、未発表曲5曲が並ぶB面では、『Foot Loose & Fancy Free』からのアウトテイクであるミラクルズ(the Miracles)のヒット曲、”You Really Got A Hold On Me”です。 カヴァー・ヴァージョンでは、やはりビートルズ(The Beatles)の楽曲が最もよく知られていると言えます。キーも当然ですが高くて、そしてワイルドで、デモと言うこともあってか、2ヴァース目で歌詞を間違えてしまっています。 聴く限りは、ウォームアップで軽くセッションしている感じで、正式にレコーディングしている感じではありません。
□ ”You Really Got A Hold On Me” by Rod Stewart

 

 

以降の4曲はツアー・バンドをバックにレコーディングしているサウンドのようで、ギター中心のバッキングで可もなく不可もない出来だと思います。 どちらかと言えば、ストーンズの様なサウンドで違うのはドラムスとベースの音数と譜割りが多いところです。 とても微妙な気がします。 アウトテイクになって当然の出来です、ライノの制作にしては非常に雑な気がします(残念です!)。
 
3曲目の“Lost Love”はスローなテンポで、フェイセズの香りがする出来で個人的には悪くはないと思います。
□ ”Lost Love” by Rod Stewart

 

 

 
今思えば、豹柄のスーツが似合うのはロッド・スチュワートか、大阪のオバちゃんしかいませんね(笑)。