昨年の11月に急逝してしまった、ニューオリンズの音楽大使と言えるアラン・トゥーサン(Allen Toussaint)のことを自分なりに振り返ってみたいと思います。
今、良く聴いている近作が3枚あります。 遺作となってしまった『アメリカン・チューンズ』(America Tunes)、その前作となる『ザ・ブライト・ミシシッピ』(The Bright Mississippi)、それから、ジョー・ヘンリー(Joe Henry)と初めて組んだオムニバス作品である『I Believe To My Soul』です。
最もメジャーな作品と言えば、『サザン・ナイツ』(Southern Nights)ですね。
我々ロック好きの人間の間で、真っ先に取り上げられるアルバムと云えば、75年リリースの『サザーン・ナイツ』(Southern Nights)になってしまいます。
確かに、バックはあのミーターズ(The Meters)ですが、アラン・トゥーサンの凄さはこのアルバムのアレンジとサウンド・プロダクションにあると思います。(ブログはここら辺です↑↓)
さて、本アルバムは、2015年10月に最後のレコーディング(バンド・アンサンブル形式)をハリウッドで録り終えました。まさか、その一ヶ月後にツアー先のマドリッドで急逝するとは想像だにしていなかった筈です。
結果的に遺作となってしまった『America Tunes』ですが、ピアニストとしての部分に焦点を当てた内容になっています。 2009年リリースの『The Bright Mississippi』のコンセプトを引き継いではいますが、より選曲の枠が拡張されています。 この6年間のブランクを経て、続編に取り組んだ訳はアラン本人のインタヴューがありませんから正直分からないですね。
ただ、本作品を『The Bright Mississippi』と同じレベルにはしない自信(確信)があったからこそ、取りかかったのだと思います。
最初に聴いてから暫くは、その良さがなかなか入ってきませんでした。 私は鍵盤楽器を演奏することは出来ません(アマチュアバンド時代に、独学でオルガンを演奏はしてはいましたが)。
何度か繰り返して聴いていく内に、そのスムース、且つ、ロールするピアノの一音一音が頭の中に「スーッ」と入ってきたのです。 そして、ピアニストとしてではなく、コンポーザー兼ソングライターであるアランが、目の前にした楽曲に対してどのようなアプローチをするのかが前作以上にクリアーになっていると感じました。
楽曲のリストを見れば分かる通り、
ピアノ・ソロにピアノ・デュエット、
そして、
バンド・アンサンブルの曲
更には、
インストルメンタルとヴォーカル入りの曲
とヴァラエティに富んだスタイルの曲が並んでいます。 曲順については、結果的にはジョー・ヘンリーとノンサッチ・レーベルの社長のディヴィッド・バイザー(David Bizer)との間で決められました。
でも、二人の間ではこの並びが必然であり、アラン・トゥーサンが存命であったとしても賛同したと述懐しています。
■ Track-list *****;
1.Delores' Boyfriend (Allen Toussaint) - 3:35
2.Viper's Drag (Thomas "Fats" Waller) - 3:18
3.Confessin' (That I Love You) (Doc Daugherty, Ellis Reynolds & Al Neiburg) - 2:52
4.Mardis Gras in New Orleans (Henry Roeland "Roy" Byrd) - 3:15
5.Lotus Blossom (Billy Strayhorn) - 4:20
6.Waltz for Debby (Bill Evans) - 3:17
7.Big Chief (Earl King) - 2:15
8.Rocks in My Bed (Duke Ellington) - 4:40
9.Danza, Op. 33 (Louis Moreau Gottschalk) - 3:27
10.Hey Little Girl (Henry Roeland "Roy" Byrd) - 2:38
11.Rosetta (Earl "Fatha" Hines) - 4:10
12.Come Sunday (Duke Ellington) - 5:12
13.Southern Nights (Allen Toussaint) - 3:33
14.American Tune (Paul Simon) - 4:59
□ Personnel;
- Allen Toussaint ; piano and vocals
- Jay Bellerose ; drums and percussion
- Bill Frisell ; electric guitar
- Greg Leisz ; weissenborn
- Charles Lloyd ; tenor saxophone
- David Piltch ; upright bass
- Adam Levy ; gut-string guitar
- Cameron Stone ; cello
- Amy Shulman ; harp
- Rhiannon Giddens ; vocals
- Van Dyke Parks ; second piano and orchestral arrangement
彼を表現する代名詞、"smooth elegance"がしっくり来るような美しい演奏です。
このアルバムと前作にあたる"The Bright Mississippi"を聴くと、それが良く理解できるのです。 両方のアルバム共に、ジョー・ヘンリー(Joe Henry)のプロデュース作品であるため、全体を通して聴けば明快な意図が分かるはずです。
個々の曲についての感想は、その弐(続編)にて書いてみたいと思います。
◇ ”American Tunes [Album Trailer]” by Allen Toussaint;