アラン・トゥーサン 『Southern Nights』 | Music and others

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 フリー・ソウル・セレクションと云う訳ではありませんが、今回はアラン・トゥーサン(Allen Toussaint)で手が止まりました。CD処分のために、時間を見てはiTunesに取り込みつつ、あれやこれやと想いを巡らせております。 家人には、「一体いつ迄かかるのか?」と訝しがられておりますが。

サザン・ナイツ』(Southern Nights)、彼の一連のアルバムの中では異形とも言える内容です。 メローでポピュラーな異色の作品だからです。バッキングのプレーヤー陣も含めて、三拍子揃ったアルバムだと言えるでしょう。

とても、聴き易くていい曲揃いですが、タイトル曲1曲だけでも購入する価値があると言えます。前作の『 Life, Love and Faith』を含め、最もらしいアルバムはこのリプリーズ・レーベル(Reprise/Warner)時代にとどめを指すと思います。



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バッキングはミーターズ(The Meters)が中心となり、滑らかなニューオリンズ・ファンクを奏でております。本アルバムで目立つのは、神業ジガブー(Ziggy Modeliste)のドラムスよりも、ジョージ・ポーター(George Porter Jr.)の印象的なベース・ラインだと言えます。


ヴァン・ダイク・パークス(Van Dyke Parks)から、リトル・フィート(The Little Feat)、ボズ・スキャッグス(Boz Scaggs)、ボニー・レイト(Bonnie Raitt)へ連なった流れ。
他には、南部志向の強かったザ・バンドの『カフーツ』(Cafoots)でのホーン・アレンジメント、ポール・マッカートニー(Paul McCartney)の『ヴィーナス・アンド・マーズ』(Venus and Mars)、ロバート・パーマー(Robert Palmer)へと網の目の様なネットワークへと繋がって行きました。

もちろん、日本においても、あの細野晴臣大先生のトロピカル三部作も少なからず影響を受けていると思います。


アラン・トゥーサンは1938年1月ルイジアナ州生れの、コンポーザー兼アレンジャーでニューオリンズの顔役と言える人です。 どちらかと言えば、裏方に徹した時の方が”いぶし銀”のような冴えを見せてくれるし、時たま絶妙な楽曲を産み出しています。 現在もマイペースでの活動を続けており、ノンサッチ・レコーズ(Nonesuch Records)に所属しております。


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このアルバムに関しては、すでにウェブ上で多くの諸氏が素晴らしい評論をされています。なので、今回は、いくつかの曲に関して簡単なコメントを書くだけに留めたいと思います。


全てが水準以上と言える曲ではありませんが、以下の3曲は素晴らしい出来だと思います。



◇ Track listing ******

  All songs composed by Allen Toussaint

 1. "Last Train" – 3:01
 2. "Worldwide" – 2:42
 3. "Back in Baby's Arms"
 4. "Country John"
 5. "Basic Lady"
 6. "Southern Nights"
 7. "You Will Not Lose"
 8. "What Do You Want the Girl to Do?"
 9. "When the Party's Over"
10."Cruel Way to Go Down"


◆ Personnel;

  Arthur "Red" Neville – organ
  Leo Nocentelli – guitar
  George Porter, Jr. – bass guitar
  Ziggy Modeliste – drums

  Gary Brown – tenor saxophone
  その他多数

  Allen Toussaint – guitar, harmonica, piano, keyboards, vocals
         arranger, producer




極めつけは、やはり冒頭の1曲目"Last Train"でしょうね。 独特のウネリを感じさせるファンクにはソウル・フレイヴァーが塗されており、いきなり引き込まれてしまいます。 神業ジガブー・モデリステのハイハット・ワークとスネアの使い方、やはり凄いですね(歌伴でこれだけの妙味、柔らかさというか滑らかさが出せるなんて・・・・)。



□ AllenToussaint - Last Train ;







そして、アルバム・タイトルにもなったグレン・キャンベル(Glen Campbell)が後年カヴァーしてチャート1位に輝いた"Southern Nights",これはアナログではB面1曲目でした。 ベトベトした湿った南部の夜という感じではなくて、とても心地よいクールなイメージが漂ってくる曲です。ヴォーカルには、レズリー・スピーカーを通して録音したようなエフェクトが掛かっています。 アメリカでは、グレン・キャンベルのカヴァーしたカントリー・ポップ版が認知されているようですが、個人的にはオリジナルの方が断然素晴らしいと思います。


■ Allen Toussaint - ”Southern Nights”;







そして、数多くのカヴァーで有名な、"What Do You Want The Girl To Do"です。 何故か、ボニー・レイト、そして、メローな絵に描いた様な伊達男振りを示したボズ・スキャッグス、そして、渋いローウェル・ジョージ(Lowell George)と、枚挙に暇がないイイ曲です。


◆ Boz Scaggs - What Do You Want The Girl To Do;





聴き比べてみても、ボズ・スキャッグスの正にシルクのように滑らかな、AORど真ん中ヴァージョンよりも、ニューオリンズR&Bライクなアルバム収録のオリジナルが断然いいです。そして、この曲でのジガブーのドラムス、さりげないスネアー・ワーク、当時聴いた時にバンド仲間と盛り上がった記憶が甦りますね。 バーボンをロックで頂きたい気分です。

そして、この曲はボニー・レイトが最初にカヴァーしており、タイトルは”The Girl”を”The Boy”に変えていました。



◇ What do you want the boy to do (by Allen Toussaint)- Bonnie Raitt;




このアルバムの次にリリースされた『Motion』も傑作です、隠れたネ。