クラウンの助手席にすっぽり入って窓の外を流れる灯りが幻想的に綺麗だなと、頭の何処かで誰かが囁いていた時。不意に車が急ブレーキをかけたので、シートベルトに縛られた体にガツンと殴られたような衝撃を受けた。
「ごめん!びっくりした?」急ブレーキをかけたのは運転していた海斗なのは当然なのだけれど、何だか焦っているみたいだったのは何故なのか分からなかった。
「どうか、したの…」最後まで言葉を発する勇気がない悠花は、どうしたのかを聞きたいのだけれどそれが出来ない。無論海斗にはその事情も当然伝わっている。
「悠花、お前、持ってたバッグは?」
そこからまたさっきの公園に舞い戻って忘れた悠花のバッグの捜索が開始された。
万事がこんな状態なのだから、そりゃあ悠花がいなくなったら大騒ぎになるのは火を見るより明らかだろう。
悠花のバッグはそこに持ち主が座っていた時と寸分たがわずにベンチに座ったままだった。
「やれやれ、まぁ見つかって良かったな」海斗は悠花を責める言葉のひとつも言わず、それよりもさっさと帰ろう、とばかりに車を走らせながら「腹減ったな」ポツリ、海斗が呟いた。
そういえば私もお腹が減ってるのかしら、海斗の言葉を受けて悠花は少し考えてみた。けれどやっぱり分からない。自分の身体の事さえ分からない私は何なのだろう?