志野狂いの自分にとって

桃山志野は

一つの憧れでも有りますが

それと比較する必要も無い位に

現代の志野も大好きです。

 

古陶磁狂いにとっては

桃山志野が頂点かも知れませんが・・・。

 

現代の志野には

桃山時代には無かった志野の作品が

生まれてきていますので。

加藤唐九郎作『紫匂』

 

現代では

赤志野が持て囃されており

評価も白い志野に比べて高い。

こんな現実が有ります。

 

でも赤志野の事を本当に知ってますか?

 

では問題。

以下のぐい呑はいつ頃の作品でしょうか?

『絵志野ぐい呑』

 

解説では

 

桃山から江戸時代頃の真面目な絵志野ぐい呑みです。

志野焼ならではの鮮烈な緋色の釉調が見事な一作です。

蔵番貼紙付時代箱入り。

正真正銘本物保証!

 

桃山~江戸時代

 

志野好きならこの解説文で

おそらく吹き出している事でしょう。

では追加の写真を見て下さい。

時代箱付

見込み

高台

高台のアップ

絵付け部分・・・鬼板の下絵付けの発色なの?

 

本物保証が何を意味するのかは

不明ですが

古志野でこの出来なら

先ず名品の一角に入って来ます。

 

これだけ綺麗な緋色(赤色)が

全体に出ているのですから。

 

志野と言うのは大雑把に言うと

 

百草土

長石釉

鬼板(絵付け)

 

この三本柱で成り立っています。

 

全体に緋色の出た赤志野と言うのは

実は鼠志野の変化バージョン。

 

胎に鬼板を塗って釉薬を掛ける。

それを焼成する事によって

緋色を発色させる。

 

簡単に言うと、そういう工程を経ます。

 

ところがこの緋色と言うのは

穴窯でしか当時生み出せませんでした。

しかも穴窯は歩留りが悪い。

現代でもそうです。

大体一割、もの凄く良くて三割。

 

ですから自然と歩留りがイイ

登り窯へと移行して行った。

当然、緋色は出ません。

志野が造られなくなったのは、こういう流れです。

加藤唐九郎作『氷柱』

 

この『氷柱』は

確か益田鈍翁が命名した茶碗ですが

志野の本格的な焼成に成功したのが

昭和五年の事です。

 

でもまだこの頃は

赤志野の概念には届いていません。

 

赤い志野を成功させたのは

誰が最初だったのでしょうか。

 

もしかしたらですが

自分は魯山人が一番早かったのではないか

そう感じていますが

実は作品の正確な年代が出ていませんので

比較が出来ないでいます。

 

ただ

魯山人は赤志野を

志野、もしくは志野風と表記していますので

赤志野という名称は

当時使われてはいなかったように思います。

 

加藤清三氏も

赤く緋色の出た茶碗を発表していますが

それらの茶碗も、鼠志野と書かれていました。

 

昭和五十年代前後が

一つのボーダーラインだと

自分は考えています。

 

赤志野という名称が

世間に認知され

はっきりと使われ始めたのは

おそらく昭和も半ば以降。

もしかしたら荒川豊蔵氏が

最初に使ったのかも知れませんが

それについては

明確な確証が得られていません。

 

比較検証が出来ていませんので。

 

紅志野と言う表現の方が

耳早かったのかも知れませんが

赤志野の方が

その色調にマッチしているように

思います。

 

陶芸家が志野の赤の研究に

没頭する一方で

もう一方の方々の研究開発も

始まっていました。

それが

 

釉薬屋さんです。

 

おそらくこの頃から

釉薬屋さんでも志野の緋色について

発色させる術の研究は

始まっていたのだと思います。

 

量産品の志野の湯呑みやぐい呑が

出回り始めていました。

それらは今でも出回っています。

 

綺麗な安定した緋色の出た志野として。

 

桃山から江戸時代に

綺麗に緋色を全体に纏った志野は

存在していません。

 

それは桃山の志野を見れば

一目瞭然です。

自分でもこの記事を書くに当たり

志野の本を何冊か確認しましたが

やはり全体に緋色の出た赤志野は

見つける事は有りませんでした。

 

だとしたら

上記の志野のぐい呑の年代は

自ずと出て来ると思います。

 

どんなに古く見えたとしても

本当に古作かどうかは

また別の話しですから。

 

それと

 

志野は織部である。

 

加藤唐九郎氏はそう断言していました。

何故なら古作の志野は

全て織部焼と書かれた箱で出て来るから。

 

志野の話しは

時間が有ったら

また別の機会に。

 

(注)東博に

『紅志野山水図平鉢』が

収蔵されていますが

その緋色は淡く

赤織部、鳴海織部の

赤さに近い柔らかな発色です。

現代の赤志野に見られる強烈さは

有りません。

また五島美術館に

『梅香(うめがか)』という

紅志野茶碗の逸品が収蔵されていますが

こちらの御茶碗は全体に

暖かな緋色を纏った温和な一碗です。

志野茶碗『梅香』五島美術館蔵