226な今日は、「脱出の日」らしいですね。

なぜ脱出の日なのか？

てっきり、二・二六事件で襲撃の現場から脱出した岡田首相のことかと思っていましたが、あ、ナポレオンなのか〜

抜け出したくなる瞬間は？

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芦沢央さんの文庫新刊。

「ホームズに出会ってしまったワトソンの話」。

読み終わって、なるほどと思いました。すごく面白かった！

少年探偵団みたいな感じでしたね。舞台は小学校、名探偵となるのは日常のどんな謎でも解き明かしてくれて、クラスメイトに「神さま」と呼ばれている男子・水谷くんです。

ワトソンのように水谷くんの頭脳に魅了され謎解きの場に同行するのは「僕」こと、語り手の佐土原くんです。

一話完結の連作短編で、登場する謎は日常のそこかしこにあるものばかり。平和な日常にあって、他の人にとってはどうでもいいことかもしれないけど、実は深く傷付いたり人生を狂わされたりしている人たちがいる。

水谷くんは、誰に何を言われても、いつでも冷静に顔色ひとつ変えることなく、真相を推理して事件を解決してしまうのです。

なんか、ほのぼの。

鮮やかに結論を導きながらちっとも得意気にならない水谷くんがとてもカッコイイのです。

語り手となる佐土原くんは優しくて良識ある両親のもと、まっすぐスクスクと育っています。だから困っている人を見ると、なんとかしてあげたくて放っておけない。

転校生で友達に溶け込めずにクラスで浮いている女子・川上さんのことが気になって、助けてあげたいのですが・・・

川上さんのお母さんは亡くなって、お父さんと二人で暮らしています。お父さんはパチンコがやめられず、仕事に行かずに毎日パチンコに行ってしまう。

川上さんから「父親のパチンコ通いをやめさせたいの」と相談を受けた佐土原くんと水谷くんは、パチンコ店から出禁をくらえばやめさせられるのではないかと策を練ります。作戦実行のため、磁石を使った工作を始める三人。まるで夏休みの自由研究みたいだなと、少しワクワク感すらあったのですが・・・

この話の終着点は、子どもたち（特に佐土原くん）が思っていたほど穏やかなものではなかったのです。子どもたちの予想を遥かに超えて、ついに最悪の事態へ。

絵が上手くて孤高の存在である川上さんのことを、佐土原くんはちょっと気になっていて、自由研究をきっかけに仲良くなれてきたことをだいぶ喜んでいたのです。ほんのりと初恋の予感も

でも川上さんのお話は、それまでのほのぼのした雰囲気をガラッと変えましたね。何不自由なく育っている佐土原くんにとっては、「この世の中にどうしてこんな子がいるんだろう」と目を背けたくなるような辛い現実に向き合う経験となります。

この連作のクライマックスは、やっぱりエピローグかな。

佐土原くんにとってヒーローだった名探偵の水谷くんが、すごく重たい言葉を吐くのです。年齢相応の幸せな小学生だった佐土原くんにとってそれは衝撃で、自分の醜い部分をも剥き出しにされてしまったようで。

ホームズとワトソンの関係は、もはや・・・

重たかったですねえ。

こんなに重たい読後感になるとは思わなかった。

そういえばいつの間にか白鳥を見かけなくなりました。

大陸に帰ったのかな。

僕の神さま