メリークリスマース

そんな日にホラー小説の感想というのもどうなのかなと思いますが、たまたまですよ、たまたま・・・

『幸せスイッチ』。

タイトルはとても幸せそうなんですけどね、幸せになりたいなあ。

小林泰三さんといえば、過去『玩具修理者』読書中に耐えきれなくなって途中でギブアップした苦い思い出があるというのに。性懲りも無くまた手を出したのは、なんかこの表紙が可愛かったからです。

でも、表紙に騙されました。やっぱりヤバかったです。一応最後まで読みましたけど。

●『幸せスイッチ』

「すべての苦痛からあなたを解放します。幸せスイッチ。」

あまりの苦痛と絶望によりとうとう死を決意した女性が、ふと目にしたネット広告。

サイトをクリックしたところ、NPO法人幸せスイッチの竹内春子という中年女性と会うことになりました。

春子が言うには、この世の苦しみはすべて欲望からきているので、”脳を欲望で満たした状態にしておけば苦痛を感じなくなる”との理屈らしい。スイッチONにすると、たちまち脳のある部分が活性化され、苦痛が消えて幸せになれるとのこと。

ああ、なるほど、それでこの表紙の女の子が帽子をかぶっているんだあ・・・

幸せスイッチ、そんなものがあったらすごくいいですけどね。この世に存在する（というか、存在しているように見える）ものは全て人間の脳内に投影された影なのだと。なんだかそう言われると、苦痛も快楽も、それが苦痛なのか快楽なのかすらわからなくなってくるなあ。

お話が結局どうなったかと言うと？

想像通り、非常に後味は悪いものです。

生きている限り苦痛は無くならないんだから苦痛をいかに捉えるかが幸せに生きる鍵。しかしそうすると生きていることそのものが苦痛みたいな、なんか絶望的な結論になりそう・・・

クリスマスの日に考えることじゃないですね

ところでこの短編集は、竹内春子という共通の名前が出てくるのですが、いつもなんかヘンな人でして、不気味でしょうがないのです。同じ人物のような、全然違う人のような。

●『怨霊』

竹内春子が引越しの時に偶然、人形を見つけます。こんな人形を持っていたのかどうか全然記憶にないけど、別に記念の品でもなさそうだったから捨てることにしました。

人形を捨ててから、怪奇現象が始まります。

これはいわゆる都市伝説を揶揄したお話なのかな？

メリーさんから始まってさとる君、カシマさん、テケテケとか出てきて、お化け大集合みたいになってたな・・・わたしはさとる君とカシマさんは知らないのだけど。

「毒をもって毒を制す」という手法らしい。ちょっと笑った。

●『どっちが大事』

「私と○○とどっちが大事なの」

っていうセリフは、昔からある陳腐なセリフかと思います。

○○の中には、スマホだったり、仕事だったり、いろんなものが入ります。

こういうこと言う女はその時点でやめておいた方がいいというのはわたしの持論なのですけど、それはまあ人それぞれなので・・・

このお話は真面目に読むと胸がムカムカして精神衛生上よくないので、あくまでギャグとして読むのが良いと思いました。

●『診断』

三歳の娘の様子がおかしいからと、救急センターに連絡してきた母、竹内春子。春子は救急車ではなく、ドクターヘリを要請しており、到着した救急隊員にゴネまくるのです。

このお話も真面目に読んではいけません。本当に胸くそ悪いです。

余談ですがうちの父親は家で倒れてドクターヘリで運ばれたことがあります。普通は離島とか僻地とか、交通が不便なところの患者がヘリで搬送されるのだと思いますが、なぜヘリだったんだろう。ちなみにわたしがふつうに青春時代を過ごした家なのですが。なんか、すんごい僻地認定されたみたいで複雑だなあ。

もちろん迅速に病院に運んでいただき父は治癒しましたので感謝しております。

しかしコロナ禍というのもあったのか、ヘリは患者だけで付き添い人は運んでもらえないそうで、結局家族は自力で病院まで行かねばならず。付き添った弟がブーブー文句言っておりました。

〜おまけ〜

雪は降りましたが一転、青空が出た日でした。こういう日は山がよく見えて雪景色が綺麗です。

ブックカフェ「風舟」のおやつ、ゆずケーキと紅茶。

ブックカフェのマイ本棚をメンテしました。

ニャンコ土方さんとえんむちゃんが目印です。