『新田義貞』、下巻です。

上巻の感想から少し間があいてしまいましたが・・・

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『新田義貞　上』群馬県太田市にある新田荘歴史博物館に展示してあり、気になっていた本です。新田次郎さんの『新田義貞』上下巻のうち、上巻を読み終えました。昭和53年の作品です…

ameblo.jp

帯にある

自らの手で一時代の幕をおろしながら

志なかばで北国の野に散った悲劇の男

「ほんとそれな」というラストでございまして、読了してしばらくはボーッとしていました。

新田どのがいなくなって寂しくて堪りません・・・

上巻は新田義貞が決起するまでの忍従の道、下巻は鎌倉攻めから始まります。思えばこの時が彼が一番輝いていた時代だったのではなかろうか。

彼はわりと猪突猛進型に描かれることが多いですが、ようく読んでみると（というか、この本では）義貞はけっこう思案します。迷いもしますし、一族のトップに立つ者の責任として、重大な決断には重臣の意見を取り入れます。理知的で常識的な武将です。

執事の船田義昌と、弟の脇屋義助がとっても頼りになる存在でしていい感じ。船田義昌は口うるさい古参ではありますがカッコイイな〜

稲村ヶ崎で引き潮時に海を渡った話。

潮が引く現象はわかっていたけれど、日程的にかなり無理があったようで、そこが新田軍の勝因ですかね。「まさかこんなことやらないだろう」という意表をつくのが戦の勝者になるものです。検証してみると、時たま頭までザンブザンブと波を浴びながら行軍したらしく、大変だしおっかなかったでしょうねえ。人もそうだけど、馬は？！馬たち、よくもこんな恐怖に耐えたわね

さて後醍醐天皇の忠臣であり続けた新田義貞なのですが、この本では楠木正成・赤松則村（円心）と仲が良いです。大塔宮護良親王が暴れん坊すぎて困ったお方なので、

「困ったのう」「困ったなあ」

と三人で頭を抱える姿が仲良くてほっこりです。赤松則村は後で足利方についちゃいますけども。

その足利ですが、最初は新田と協力してたのにいつの間にか宿敵みたいになったのはなぜ？

足利尊氏さまも最初はこんなLOVEだったのに・・・

「私は新田庄どのが好きです。あなたとここにこうしていると兄と話しているような気がします。もともと新田氏と足利氏は兄弟だった。今も兄弟であってもいいではないでしょうか、のう新田庄殿」

と、尊氏は女のように白い顔を義貞に近づけて、熱っぽく語るのでした。

→たぶん騙すつもりとか全然なくて、天然で言ってたんだと思いますこのヒト。足利と新田が協力するべきなのは、本当にそうだったかもしれません。

が、兄はそうでも、結局は弟の直義がそうはさせなかっただろうな。直義さまとは根本的に合わなそうだしなぁ・・・

だからこのあと袂を分かち足利と新田が何度も何度も戦いを繰り広げるのは、

愛が裏切られた時、

人は鬼になる

これじゃなかろうかとわたしは密かに思うのです・・・ウン。

新田義貞の敗因の一つに、彼が肝心なところで、ちょっと優しいってのがあるのじゃないかと思います。

例えば中先代の乱。

事実かどうかはわかりませんが、鎌倉にいた時から義貞は屋敷がお隣同士だった諏訪氏と仲が良くて、諏訪盛高が幼い北条時行を連れて落ち延びる時、新田の家臣・堀口貞義がそれと分かってこっそり新田庄経由で逃してやったということになっていますね。それ以外にも、諏訪氏と新田氏が懇意にしているポイントがいくつかありますし。