群馬県太田市にある新田荘歴史博物館に展示してあり、気になっていた本です。

新田次郎さんの『新田義貞』上下巻のうち、上巻を読み終えました。昭和53年の作品です。

もう、新田義貞愛が溢れる物語です。

なぜかというと、なんか新田どのが健気なんですよね。

時代的には、新田小太郎義貞が産声を上げるところから始まりました。（そこから？！）

祖父新田基氏の夢：

「生品神社の鈴が一人で鳴り出し、社殿の奥から神の声が聞こえた。五日後に沛然たる雨と共に大将軍が誕生するであろうという、神のお告げがあった」

もう期待ありありの爆誕です！

それもそのはず、新田氏は長年耐えに耐え続けた忍従の日々でした。鎌倉幕府の北条家とうまくいかずに冷遇されていたのです。先祖の新田政義の代に、北条一族の悪政に反発したため莫大な罰金を科され、領地も一部没収。以降、無位無冠のまま。

もとはといえば新田氏は由緒正しい源氏の一門で、新田氏が兄・足利氏が弟の関係です。

一方の足利氏は、北条氏と代々縁組をして関係構築してきたため、北条が認める（つまり鎌倉幕府が認める）源氏の嫡流となっています。

これは面白くない。

なので物語のところどころに散見されるのが北条氏への恨み。

（北条氏は平家の家系なので、「平家のくせに」的なセリフもチラッとあったりします）

そして、

足利氏への憎悪

（っていうか嫉妬）

この、「本当はオレらが・・・」的なプライドと、今に見てろという野望を一身に背負って生まれてきたのが新田小太郎義貞だったわけです。余談ですが「小太郎」って名前カワイイですね。

そんなわけで、成長した義貞も幕府にいいようにコキ使われて地方の反乱討伐に行かされたり、鎌倉警護に呼び出されたり。もちろん全部自腹です。ただでさえ無位無官で収入に乏しいのに、こういう出費は痛い。

別にこの小説のテーマでもなんでもないんでしょうが、義貞はいつもお金に困ってるなぁっていうイメージがわきました。

「また出費がかさむな」という会話がやたら目につく。

それに比べて足利家のなんとゴージャスなことか！！

足利が公式の源氏嫡流とされているので、新田氏は鎌倉に呼び出された時には、必ず足利屋敷に最初にご挨拶に出向かなければなりません。これキツイですね・・・悔しいですね。

義貞が足利屋敷で出会った少年。

それこそが、のちの足利尊氏（高氏）でした。

尊氏は・・・

安定のサイコパス

キャラだった

（新田次郎さんの解釈もそれか）

まあ面白いんですけどね。

天真爛漫で無邪気だなと思ったらいきなり無礼なツッコミ入れたり、ソワソワと落ち着きがなかったり、情緒不安定で笑ったり泣いたり。かと思うとすごく親切にされたり。

（↑こうして書き出してみたら相当怖いなと思った。大丈夫かこの人）

さらに、義貞が足利直義と初めて会った時のシーン。

化粧坂のゴミ

面と向かってそう言われてしまったよ

これが足利直義の舌鋒ってやつかー

（直義さまはいつも言い過ぎである）

兄弟と別れて、雪の中を新田屋敷に帰った義貞。

頭の中を駆け巡る言葉、

化粧坂のゴミ・・・

化粧坂のゴミ・・・

（↑かなりショックだった様子。かわいそう）

なぜって義貞は無位無冠だから。

尊氏も直義も自分より年下なのに、彼らは立派な官位があるから。致し方ない。

けれど！

許さん

こう思って然るべきですね。

新田義貞の反撃が始まるのだ！

そして、この状況を嗅ぎつけて、うまいこと利用しようとする後醍醐天皇！

新田義貞は朝廷からの密偵に徐々に取り込まれてゆく・・・

暴れん坊皇子・大塔宮護良親王！

京都大番役で上洛した新田義貞は、楠木正成や赤松氏と出会い・・・始まるぞ〜！！

というわけで上巻終了。

なんか新田どのは大将軍というより、悲劇のヒーローって感じで哀愁漂うな・・・

〜おまけ〜

小説に出てきた新田庄の史跡。

何が何やらって感じだったのですが、少しずつ繋がってきた。

「絶対に落ちない」という金山城。険しかったです。

反町館。

世良田館。

江田館。

大体、すでに野っ原になっているのだが・・・

新田義貞 上

新田義貞　上