南北朝とか室町幕府とかの関連本をあさっていたら見つけました。

新田義貞の末裔であり、幕末の二十一代当主である岩松満次郎俊純を描いた小説です。

新田義貞ってその功績から、かなり英雄扱いになっていてもいいと思うのですが、何故いまいちパッとしないのだろう？何を見ても脇役というか、書籍があんまり見つからない。

めっちゃ戦は強いのですが、代々世渡りベタなところがあったのだろうか・・・脳筋だし。←※個人の感想です

新田家は八幡太郎義家を先祖に持ち、足利家に匹敵か、もしくはそれより上ではないかという源氏の名家なのですが、鎌倉幕府の世では何かやらかしてたみたいで没落。確か新田義貞も、挙兵するまではすごくビンボー暮らしだったような・・・

新田義貞が討ち死にした後はひっそりと家系が続いていたのですが、関東に入部した徳川家康がこれに目をつけた。

徳川というか松平家はどこの馬の骨ともわからない流れ者なので、ハクをつけるために源氏の名族・新田家の系図を出させて、ちゃっかり松平をそこに潜り込ませたらしい。

だから徳川家が源氏の系統というのは、実はインチキくさいのですね。

まあでも没落していた新田の十三代守純は、家康様のお力で大名に取り立てられました。

が、その石高、たった120石。

家康様、ドケチだなー！

ただ家格だけは高くて、江戸城では高家と並ぶ柳の間詰めだったそうです。カネはくれないけど名誉だけはくれる。

家を維持していくには当然ながら低収入すぎるのですが、そこは名門・新田の殿様なので・・・

あちこちから寄付や贈り物があるのですって。ていうか、そういうのに頼らないと暮らしていけない。

贈り物の返礼には、格式高い新田の「中黒紋」入りの品物を贈ると喜ばれます。もらった方はすごいステータスなんですね。

もう一つステータスがあって、それが新田岩松家の殿様が描く猫の絵です。「新田猫」とか「新田の猫絵」と呼ばれています。

↑これは俊純よりも前の殿様の絵ですけど、上手いのかどうなのか・・・

いや、上手い下手じゃないんです。新田の殿様が描くことに意義があるのです。上手くてもヘタでも、とにかく代々の殿様は猫の絵を描くのが大事なお仕事だったみたいです。

その謂れは。

昔、関東をネズミの大群が襲って、農作物から家財道具まで全てを食い荒らした大被害があったのですって。

これが、非業の死を遂げた新田義貞とその一族の祟りだと囁かれたらしいです・・・

？

なんでや？！

ちょっと意味がわからないんですけど、それで現代の新田の殿様が描く猫絵がネズミよけに効く霊験あらたかなものとして、人々から求められたらしい。

しかし・・・

新田義貞の怨霊って、なんつうか、、、

テキトーにおちょくられてはいませんか？！

あの脳筋　マッチョ武将が怨霊になってネズミって・・・

ネズミ・・・ププッ

まあ、猫絵を描いてあげると当然お礼もいただけますので、大事な収入源です。

あまりにも新田義貞の末裔の暮らしぶりが面白かったのでつい長く書いてしまいましたが、小説は短編集仕立てになっていて、幕末の新田当主・俊純が江戸参府した時の見聞録、そして知行地である上州で暮らしている時のおもしろエピソードが満載です。

特に上州の、博徒とかの荒くれ者が跋扈している土地のお話が面白いんですよねえ。国定忠治が有名ですけど、ホントにそんなヤクザもんばっかりいるような土地柄だったみたいで（少なくともわたしはそんな印象で読んでいましたが）。

黒船が来て、戊辰戦争が起きて。

天皇方の忠臣であった新田義貞の遺志を継ぎ、俊純は「新田官軍」として新政府側に合流。

が、ここでも軍資金がなくて装備ができないから役立たず扱いされる

まあそれでも、上越の国境に布陣した会津兵と戦って勝利したりしてます。地味に。

全然パッとしないんだけど、とても楽しく自由に暮らしながら歴史の片隅でしぶとく生き残る新田の殿様が、微笑ましいと思える一冊でした。

近所に生息している猫。お散歩中によく目があう。

猫大名