仕事から帰ってくるであろう時間を見計らって彼(現・夫)に電話をかけた。



彼「もしもし? どうした?」

私「うん、あのね…」



先ほどあったことを話した。

お礼のお菓子と手紙を贈ったこと。

電話がかかってきたこと。

ビックリさせちゃったみたい。突然送りつけてごめんなさいと伝えて欲しいこと。

彼母のセリフはあえて言わなかった。

彼はわかった、実家に連絡してみるよと言った。



しばらくたって、彼から電話がかかってきた。



彼「おふくろがチーコに謝ってたよ。

 仕事上いっぱい人づきあいがあるから、そっちの人と勘違いしちゃったって。

 おふくろ昔っから早とちりでさー。」



そうか、勘違いか…







勘違い、するか?



私、手紙も一緒に入れたよ?

普通、誰だかわからなかったら手紙見て確認するよね?

手紙読んだら、わかると思うんだけど?



「タケさんのお父様・お母様にお会いできてとても嬉しかったです」



↑この一文で仕事関係(ネットワークビジネス)じゃないって想像できるでしょ?

タケ(夫)の名前出してるし。

タケの両親、って立場で人に会うことなんて、今はもうほとんど無いでしょ?



当時は本当に不思議だったけど、今ならわかる。

義両親が私からの贈り物だと気づかなかった理由が。



早とちりなんかじゃない、あの人たちは単に馬鹿なのだ。

そこまで頭が回らないのだ。

見たことのない住所からの荷物→知らない人からの贈り物が届いた!

そう決めつけて、開封もせずに電話をかけてきたのだ。手紙の存在に気づく前に。



息子が結婚すると言って連れてきた女の名前なんて全く覚えていなかったのだ。

2日前に会ったばかりだというのに、二人揃って忘れていたのだ。


私「もしもし」

彼母「○○(彼の名字)と申しますが、チーコさん…いらっしゃいますか?」

私「はい、私です」

彼母「今日、うちにそちらからお菓子が届いたんです」

私「はい、先日は…(ありがとうございました)」



彼母「(私の言葉を遮って)なんでしょう?」

私「? はい?」

彼母「なぜこんなものを贈って来られたのですか?」

私「?? え? そ、それは…(先日のお礼に…)」



思いがけない問いかけに言葉に詰まっていると、
彼母はキツイ口調でこう言い放った。



彼母「夫も私もあなたのことは存じ上げませんし、

 お菓子を頂く義理もございません。

 いったいどういうつもりなんでしょうか?」



絶句、とはこういうことか。

頭が真っ白になり、電話口でしばらく沈黙が続いた。

このままではいけない!と思い、勇気を振り絞って言葉を発した。



私「あの…私、△△です。△△チーコです。

 この間の日曜日にタケ(彼の名前)さんとご一緒に、東京でお食事させていただいた者です…」



彼母「…え? あっ、あー…
 
 あーーーーーっっ!!
 はい、はい!

 あなたね~!!
 ごっ、ごめんなさいね~!!」



電話が突然切られた。

私は受話器を持ったまま、しばらく呆然としていた。

その後、悔しいのか悲しいのか訳の分からない感情で胸がいっぱいになり、

声を上げて泣いてしまった。


彼(現・夫)のご両親に会った次の日、

仕事帰りにデパ地下へ出向いた。

わざわざ上京までして会う時間を作ってくれたことへのお礼に、

改めてお菓子でも贈ろうと思ったのだ。



ぐるりとフロアを一周して、季節限定の焼き菓子を購入した。

前夜用意していた、できる限りの丁寧な字で書いたお礼の手紙を同封し、

彼の実家へ宅配便で送った。



手紙は

「先日はお忙しい中どうもありがとうございました。

タケ(彼の名前)さんのお父様・お母様にお会いできてとても嬉しかったです。

まだまだ至らない点も多いかと存じますが、

これからよろしくお願いいたします」みたいな内容だったと思う。



次の日、仕事から帰ってきて部屋でくつろいでいたら電話が鳴った。

ナンバーディスプレイに関西某県の市外局番が見えた。



…彼のご両親からだ!



お菓子に対するお礼の電話だろうと、何も疑わず受話器を取った。