我が輩は、天下無敵のボンベイ😹(黒😹)の小春ちゃんである。−−−−実態は飼い主の😹おやじに怯えて高い所に避難種ているだけである。

高い塀の上、冷蔵庫の上、そして揺れるカーテンレールの上に至るまで、我が輩の歩めぬ高みはない。猫族の身軽さとバランス感覚は、もはや芸術の域に達している。誰もが「さすがムサシ君、見事な着地だ」と称賛の眼差しを向けるのが日常であった。
ある秋の日の午後。リビングのど真ん中に、飼い主がうっかり置き忘れた「巨大な段ボール箱」が出現した。​「ふん、なんだこれは。我が輩の領域に勝手に物を置きおって」。​小春ちゃんは優雅に尻尾を揺らしながら、タンスの上からリビングを見下ろしていた。
だが、その段ボール箱の中身が何であったか……それがすべての悲劇の始まりだった。なんと中には、昨日届いたばかりの「特製・超強力つるつるワックス」の缶が転がっており、蓋が少しだけ開いていたのだ。​(まあ、我が輩ほどの華麗な身のこなしであれば、たとえあの箱のフチに着地しようとも、微塵の隙もない!)
小春ちゃんはフッと鼻を鳴らすと、タンスの頂上から大空へと舞い上がるような(つもりの)大ジャンプを放った。美しい空中姿勢、風を切る耳、完璧な着地予測。

すべてが完璧だった。​……はず、だった。​ドンッ!!
​着地した瞬間、ムサシの肉球が捉えたのは、段ボールのフチではなく、あろうことかこぼれ出たワックスの液体だった。
「にゃっ……!?」。次の瞬間、物理の法則を完全に無視したかのように、小春ちゃんの四肢がツルツルーッと四方に滑り出した。氷の上を滑るフィギュアスケート選手よりも激しく、かつ全く優雅さのないブレイクダンス状態である。
「ずるるるるっ! た、助け……いや、プライドが!」。​あろうことか、小春ちゃんはそのまま勢いよく段ボールの隙間へと、ズボッと見事に「落とし穴」の如くハマり込んでしまった。
​外から見えるのは、箱の底から突き出た哀愁漂う二本の後ろ足と、バタバタとジタバタする尻尾だけ。
遠くで聞いていた同居😹のモミちゃんが、ひょっこり顔を出し、呆れたような、それでいて侮蔑を含んだ目でその様子をじっと見つめている。​(……見られた。この完璧なる我が輩の失態を、あのモミちゃんに見られた!)
小春ちゃんはワックスまみれの顔を箱の底からグイッと引っ張り出し、何食わぬ顔でこう呟いたのだ。
​「……ふっ、愚民どもめ。高い所から落ちたのではない。あえて、この深淵なる段ボールの謎を解き明かすために、自らダイブしたまでよ!」
​もちろん、モミちゃんは「ニャー(言い訳が無様ねぇ)」と一声鳴いて、プイと去っていったのであった。
​教訓:どんなに高名な名猫(めいねこ)も、足元の「うっかり」には勝てない。
いかがでしたでしょうか? 高い所が得意な😹だからこそ、思わぬ油断が思わぬ大失敗(落とし穴)につながるというクスッと笑えるお話でした。