星のぬくもりを感じながら
カバーがぼろぼろになるほどに読み返している
お気に入りの本のページをめくる


ソファに寝そべり
穏やかな眠りにつく前の
それは
神聖な儀式のよう



視力を失って
初めて必要としたのは本を読むことだった


白くて四角い病室の中で
たくさんの細い管に繋がれながら私は
本を読むことが
まるで息をすることより必要に感じられた


ぼんやりとした輪郭だけの人々が
入れ替わり立ち替わりやってくるたび
活字を
点滴の管に入れて欲しいとねだった


実際
私の中からは
言葉さえも失われかけていた


唇や舌が
音をつないで言葉を紡ぐことができない


そのために
私の中には
たくさんの言葉が行き場を失って
あふれだしそうな状態


本を読むことは
それらを
あるべきところにあるべきように
きちんと納める作業の役割だったのかもしれない




こうして
一つ一つの言葉を指でなぞりながら
長い歴史の中で
さまざまな人々がペンを握り
本を書きあげたその奇跡を尊びたい



たくさんの物語は
私に誠を教え
たいていの詩は
私に愛を教えてくれた



読書の喜びというだけでは
捉えることのできない
そこには深い生への探求があるのだ



Cameo.