目が覚めたら
となりに男の人が寝ていた
知っている顔だった
私は横になったまま
彼の顔をじっと見た
彫り深く美しい横顔
すうすうと
穏やかな寝息が
規則正しく
空気に滲んでいく
胸のあたりに耳を近づけてとくんとくん
と
心臓が動く音を確かめる
私は
この
とくんとくんを
聞くのが好きだ
とくんとくんを聞きながら
彼が
このまま目を醒まさずに
ずっとこうして
眠ったままでいたら
どんなに良いだろうか
と
静かに目を閉じながら
思いを馳せた
しばらく経って
目を開けてみると
そこに彼の姿はなかったが
私は驚きはしない
また
目を閉じる
瞼の奥には
彼が
美しい寝顔のまま
横たわる
とくんとくん
確かに聞こえる
とくんとくん
残像なのだ
すべては崩れて
跡形もなく
私の両目は
もう
二度と開くことはないだろう