B氏は日頃から恐そうなイメージで他部署の人間からも恐れられていた。


そんなB氏、後輩が自分の認めるレベルになったと判断すると非常に付き合いやすい
人でもあった。



入社3年目、同期のジャニ君とともに管理人もキャプテンに昇格。



昇格までに他の新入社員の教育やOJTを任されていたが、優しく教えていたので
新人たちからも管理人のトレーニングは好評だった。



キャプテン昇格後、B氏と新入社員の教育論について話し合ったことがある。



管理人は、体育会系出身なのでシゴキやイジメは自分も体験したし、後輩に対しても
行っていた。

でも、それで確実に実力が付くかといえばそうではないと考えている。

怒られる恐怖心に駆られてやらされると、考えることを止めてしまうから。

自分で考え、理解した上で練習する方が身になると考えていた。



そんな話しをB氏としていた時に聞いたB氏の教育論も素晴らしかった。




急に質問する。

新人は答えが解かるはずがない。

怒鳴る。次の出勤日までに調べさせる。


基本的にはB氏の教育はこの繰り返し。




そこには明確な意義があった。



ホテルに入社する人間は、基本的には専門学校卒や高卒が多く、一流大学卒はあまりいない。

自分で勉強する術を知っている人間には上記の様な教育方法は必要ないという。

大学に行く学力がなく、なんとなく専門学校に進んだ人間が多い。

そういう人間は得てして効率よく勉強する術を知らない。

つまるところ、普通に過ごしているといつまでも知識が付かず自信が持てない。

そうなれば、出来の良い後輩にもいつかバカにされる。

だからこそ、最初は無理矢理でも勉強させて知識を付けさせる。

そうすると、皆が知らない事を自分だけが知っている場面に出くわす。

そこで初めて、自分に自信が持てるようになり、知識を付ける事が楽しくなる。

そこまでいけば、放っておいても勝手に勉強するようになる。






管理人もジャニ君も、見事にB氏の術中にはまっていた。

現に、キャプテン昇格直前ぐらいにはB氏が我々に怒鳴ることはほとんど無かった。

勝手に勉強するレベルに達したと判断してもらえたのだろう。



この人は、自分の落ちこぼれ経験があるからこそ、こうやって後輩を厳しくも愛のある
やり方で教育していると言うことがよく理解できた。