水原さんの1月新刊です
モノクロ表紙イラストのペーパーが付いてました。

『逃亡者』というタイトルから
裏社会のハードボイルド系かと思ってましたら
まったく違いましたw

作家買いしてる作家さんの本は
裏のあらすじを読まずに買うので
こういう勘違いもありますねw


逃亡者 著者:水原とほる イラスト:いさき李果
ガッシュ文庫 BL小説 2010年1月
★★★★
逃亡者 (ガッシュ文庫)/水原 とほる
¥650
Amazon.co.jp


◆あらすじ
愛から逃げて、生きてきた――。 トップアスリートのトレーナーとして渡米していた朋彦は、恋人と別れて失意のまま帰国した。 今は個人相手のスポーツジムに勤務している。 ある日、大手酒造メーカーの御曹司・真之の担当トレーナーをつとめることになった。 本気の恋はしない。そう決めていたはずが、駆け引きを知らない年下の真之からの遠慮のないアプローチに心を乱されてしまう。 身体の奥深くまで抉られて、久しぶりの快感に酔いしれる朋彦。深入りしてはいけない。分かっていながらも、その心を止められず…? ◆



朋彦は日本から逃げ出してアメリカに渡りました。
そして今度はアメリカから日本に逃げ帰ります。

その理由は…
ゲイであること。
職場では公言していますし
客であるアスリートにも問われれば答えますが
それは母親にだけは絶対に知られてはならない。

自分の性癖が
自身のアイデンティティの崩壊に
繋がっているのがわかっているからこそ、
遊び以外の恋をしようとはしない朋彦です。

本気で誰かを好きになってはいけないと
自分の心を強く戒めている朋彦の背景には
ある事情があるのです。


自分が、あるいは相手が本気になってしまうと
逃げ出すことしかできない朋彦に
日本で真之というジムの客との出会いが訪れます。

5歳年下の真之は何故か朋彦に
トレーナーと客以上の親しみを籠めて近づいてきます。

真之は朋彦の好みのど真ん中で
しかもアメリカで別れた恋人と同じ香りをまとわせる真之に
遊びのつもりで抱かれてしまいます。

相手はノンケ。一度寝れば懲りるだろうという
朋彦の予想を裏切り、真之は朋彦にのめりこんでいきます。

年下ではあるけれど、
29歳というしっかりとした大人である真之からの
ストレートな愛情表現と、包み込むような温かさに
本気になってしまう自分に気づく朋彦。

でも真之は、大手企業の御曹司。
朋彦との関係はスキャンダルになりかねず
真之の本心が読みきれないまま
またしても逃げ出そうと考え始めます。


好きだという気持ちを自覚していても
というより自覚してしまうと怖くなって
逃げ出してしまうんですね。

本当は自分と共に歩んでくれる人を求めているのに
求めてはいけないのだと自分の気持ちを押さえ込んでしまう。
でもそうしなければならない理由は
本当は朋彦にはないんですよ。

ゲイであることを母親には絶対に知られてはならない理由。
そこに朋彦の苦悩の種があるんです。


それに関して、
今まで付き合ってきた誰にも明かさなかった朋彦が
唯一真之にだけは打ち明けてしまった。

それを知った真之は、なんとかしてその問題を
朋彦に乗り越えてもらおうと必死なのですが、
その差し伸べられる手をも拒否してしまう朋彦が悲しい。


真之自身も心に辛いものを抱えている生い立ちで
だからこそ真之も朋彦を強く求めているのですが…。


それぞれが心の中に重いものを抱えながら
朋彦は逃げ出そうとし
真之は求め続ける。。。

二人のやりとりに胸がしめつけられる場面が多々ありました。
読んでてこっちが泣きたくなるような…。


問題を乗り越えていく強さを真之から教えられた朋彦と
その朋彦を温かく受け止める真之。
そうすることで真之自身の心の痛みも
消えていくのだろうと思えるような終わり方が素敵でした。


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